赤色超巨星に予想外の強力な磁場
【2018年4月25日 鹿児島大学】
約3700光年彼方の「おおいぬ座VY星」は、太陽の25倍の質量と1400倍以上の半径を持つ赤色超巨星である。赤色超巨星は星の一生の最終期にあたる段階だが、こうした老齢星は大きく回転が遅いことなどの理由で、若い星のような活発な磁気活動は行われていないだろうと予想されてきた。
おおいぬ座VY星(赤い部分)と太陽系の大きさの比較。おおいぬ座VY星の光球は半径6.6天文単位(約10億km)まで広がっており、これは木星軌道よりも外側になる(提供:鹿児島大学、以下同)
赤色超巨星は自身が放出した物質によって取り囲まれているため、星自体や星の近くの様子がどうなっているのかを光学的に観測することはできないが、電波を使うと塵を見通して観測が可能になる。そこで、鹿児島大学理学部物理科学科・天の川理工学研究センターの新永浩子さんたちの研究グループは波長の長い電波を使って、おおいぬ座VY星の半径の約100倍程度まで広がった領域を詳しく観測した。
その結果、きれいにそろった磁力線と、強力な磁場の塊である磁気雲が星の周りに複数個発見された。磁気雲は、おおいぬ座VY星が恒星風で莫大な量の物質を激しく放出した際に一緒に放出されたものと考えられており、活発な磁気活動が起こっていることを示すものだ。このような巨大老齢星の磁気活動については、これまで全く知られていなかったものである。
巨大老齢星の磁気活動が活発な時の想像図
老齢の赤色超巨星が若いころと同じように活発な磁気活動を継続している様子をとらえた今回の成果は、これまでの理論的予想を覆すものだ。今後、他の老齢星を観測することで、活発な磁気活動がおおいぬ座VY星に特有のものなのか一般的なものかを見極めたり、星の進化と星の磁場の関係に関する情報が得られたりするだろう。
〈参照〉
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