重力波検出に貢献した研究者3名、ノーベル物理学賞を受賞

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2017年のノーベル物理学賞は、世界で初めての重力波検出に貢献したアメリカの研究者3名が受賞した。

【2017年10月4日 ノーベル財団日本物理学会東京大学宇宙線研究所

米・マサチューセッツ工科大学名誉教授のRainer Weissさんと米・カリフォルニア工科大学名誉教授のBarry C. Barishさん、Kip S. Thorneさんの3名が、2017年のノーベル物理学賞を受賞した。レーザー干渉計型重力波検出器「LIGO」への明白なる貢献と重力波初観測の業績が評価されたものだ。

受賞者発表の中継動画

Weissさんはアメリカ国内の2か所に設置されている「Advanced LIGO」(旧:LIGO)プロジェクトをはじめ、欧州重力波観測所の重力波検出器「Advanced Virgo」(旧:Virgo)や日本の「KAGRA」プロジェクトなど、現在の重力波検出器が採用しているレーザー干渉計による検出法を提案した。

Rainer Weissさん
Rainer Weissさん(提供:マサチューセッツ工科大学ウェブページ Weissさん紹介ページより)

BarishさんはLIGOプロジェクトのリーダーを務め、重力波探しを目的として1997年に創設された国際的物理学研究グループ「LIGO Scientific Collaboration」を作り上げた。

Barry C. Barishさん
Barry C. Barishさん(提供:カリフォルニア工科大学ウェブページ Barishさん紹介ページより)

ThorneさんはLIGOによる重力波観測の黎明期から、主に理論面での発展において中心的な役割を果たしてきた。

Kip S. Thorneさんの肖像画
Kip S. Thorneさんの肖像画(提供:カリフォルニア工科大学ウェブページ Thorneさん紹介ページより(Drawing by Glen Edwards, Utah State University, Logan, UT))

時空の歪みが重力波として伝わることは一般相対性理論から予言されていたが、その歪みは非常に小さいことから、一般相対性理論を発表したアインシュタイン自身は重力波の検出は不可能だと考えていた。それを可能にしたのがLIGOであり、受賞者3名は科学者として、また20か国以上から1000人を超える研究者が集うプロジェクトのリーダーとして、LIGOプロジェクトの実質的な稼働開始から40年にわたる努力を続け、2015年9月、ついに世界初の重力波検出を成し遂げたのである。

レーザー干渉計型重力波検出器「LIGO」
レーザー干渉計型重力波検出器「LIGO」。設置場所はそれぞれ(左上)米・ワシントン州ハンフォード、(右下)ルイジアナ州リビングストン。クリックで画像拡大(提供:LIGO Collaboration、イラスト:Johan Jarnestad/The Royal Swedish Academy of Sciences)

重力波の検出によって人類は、電磁波やニュートリノによる観測では見ることができない宇宙の姿を解き明かす新たな手段を手に入れ、「重力波天文学」が本格的に始まった。今後の重力波の検出と、発生の背後にある現象の解釈から多くの発見がなされ、天文学や物理学の発展へとつながることが期待される。


2017年ノーベル物理学賞の発表を受けてのKAGRAプロジェクト代表 梶田隆章所長のコメント:

(東京大学宇宙線研究所ホームページより)

我々KAGRAグループは、ワイス先生とバリッシュ先生とソーン先生に今年度のノーベル物理学賞が授与されたことを心より祝福します。受賞の対象となったのはLIGO-Virgoによる人類初の重力波直接観測ですが、これはアインシュタインの一般相対性理論の検証につながるだけでなく、未知であった連星ブラックホールの存在を明らかにし、さらにその合体時に発生する重力波形から時空の物理に迫るという多くの「発見」につながるものでした。これにより、21世紀はまぎれもなく重力波天文学の創成と発展の世紀となります。今後も多波長にわたる電磁波、ニュートリノなどによる天文学と連携したマルチメッセンジャー天文学が展開されていくはずです。

この長基線長レーザー干渉計による重力波検出を企画立案し、その実現に尽くされてきた受賞者の先生方の卓越した先導力と叡智、そして無尽蔵のご気力に感服いたしますとともに、それを支えてきた共同研究者の方々の努力にも敬意を表します。

さて、我々はKAGRAの建設を加速し、一刻も早く高い感度を実現してLIGO-Virgoが構築した重力波国際観測ネットワークに参加し、重力波天文学という新たな学問分野に貢献していくつもりです。LIGO-Virgoに加えてKAGRAが加わることで、重力波源の全天カバーや、方向などの決定精度の更なる向上、重力波の偏波などからの一般相対性理論の検証などを行って行きます。

宇宙には、まだまだ重力波を観測手段として研究すべき天体現象がたくさんあり、その観測を通して新たな謎も見つかるはずです。それを国際重力波観測ネットワークの共同作業として解き明かしていきたいと考えています。

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