重力波イベントの最新カタログ「GWTC」第4版がリリース

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LIGOなどの重力波望遠鏡でこれまでに検出された重力波イベントの最新カタログが発表された。219件の現象が収録されている。

【2025年9月3日 LIGO科学コラボレーション

米国の重力波望遠鏡「LIGO」と欧州の「Virgo」、日本の「KAGRA」からなる「LVKコラボレーション」は現在、2023年5月に始まった第4次観測運転(O4)を行っている。

このO4の前半である「O4a」(2023年5月24日~2024年1月16日)で得られた詳細な観測データが公開された。

このデータと合わせて、過去に検出された重力波イベントを網羅した「重力波突発現象カタログ(GWTC)」のバージョン4.0が新たに公開されている。GWTC-4.0には、2015年に史上初めて検出された重力波イベント「GW150914」から、2024年1月9日に検出された「GW240109_050431」まで、計219件の重力波イベントが収録されており、前回リリースされた「3.0」のデータに加えて、新たに128個の強い重力波信号候補が収められている。

星の墓場の質量図
LIGOなどの重力波望遠鏡で検出された重力波イベントの内訳を描いた「星の墓場の質量」図の最新版。縦軸が合体前後の天体の質量を表す。青がLVKで検出されたブラックホール、オレンジはLVKで検出された中性子星、赤はX線や電波など、従来の電磁波観測で発見されたブラックホール、黄色は従来の電磁波観測で発見された中性子星の質量をそれぞれ表している。画像クリックで表示拡大(提供:LIGO-Virgo-KAGRA / Aaron Geller / Northwestern)

これに付随するカタログや論文も近く公開される予定とのことだ。

GWTC-4.0に収録されている主な重力波現象としては、史上最も重いブラックホール連星の合体をとらえた「GW231123」(参照:「最も重いブラックホール合体による重力波の記録を更新」)や、2023年5月19日に板垣公一さんによって発見されたM101銀河の超新星「SN 2023ixf」(参照:「板垣さん、回転花火銀河に明るい超新星を発見」)の爆発前後に発生したデータも含まれている。

ただし、SN 2023ixfはO4が始まる直前の調整期間中に出現したため、出現当時にLIGOの2基の検出器が同時に観測モードになっていた時間は全体の15%に過ぎなかった。また、もともと超新星爆発による重力波は、天の川銀河や局所銀河群内で発生しない限り、エネルギーが弱すぎてLIGOなどでは検出できないと予想されている。これまでの解析では、SN 2023ixfと明らかに関連する重力波イベントは見つかっていない。

重力波の時間変化
過去に検出された重力波の時間変化の一覧。各画像で、横方向が時間、縦軸が重力波の周波数、明るさが信号の強さを表す。中性子星やブラックホールの連星が近づいて合体するときに発生する重力波の信号は「チャープ」と呼ばれ、時間とともに周波数が高く、強度が大きくなっていく。画像クリックで表示拡大(提供:Ryan Nowicki / Bill Smith / Karan Jani)

O4は2025年11月まで続けられる予定で、LVKコラボレーションでは検出された重力波イベントのアラートもリアルタイムで配信している。これまでの観測運転期間中には計300件以上のアラートが配信されている。

重力波イベントの距離等
O1からO4aまでで検出された重力波イベントの、距離・質量・信号のS/N比の一覧。中心からの距離が天体までの距離、円の大きさが合体後の天体の質量、色の濃さがS/N比の高さを表す。観測が進むにつれて、遠方の現象まで高いS/N比でとらえられるようになってきた。画像クリックで表示拡大(提供:Derek Davis, Rhiannon Udall / Caltech / LIGO-Virgo-KAGRA)

GWTC-4.0に収録されたブラックホール連星の合体イベント86件について、発生した重力波の様子をシミュレーションした動画「Visualization of the GWTC-4.0 events」(提供:I. Markin (Potsdam University), T. Dietrich (Potsdam University and Max Planck Institute for Gravitational Physics), H. Pfeiffer (Max Planck Institute for Gravitational Physics).)

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