いて座に新星が出現

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8月6日、いて座に約13等級の新星が出現した。福岡県の西山浩一さんと佐賀県の椛島冨士夫さんも8日に、約11等級で独立に発見している。

【2016年8月12日 VSOLJニュースCBAT

著者:前原裕之さん(国立天文台)

いて座は私たちの天の川銀河の中心方向に見える星座で、8月上旬から中旬には21時ごろ南中し、南の低い空に見ることができます。いて座の中にはこれまでにも多数の新星が発見されていますが、8月6日に新たな新星が出現しました。この新星を最初に発見したのはハワイとチリでそれぞれ4台の口径14cmの望遠鏡とCCDカメラを使って超新星のサーベイを行っているAll-Sky Automated Survey for Supernovae(ASAS-SN, "Assassin")のグループで、8月6.96日(世界時、以下同、日本時間7日8時ごろ)に撮影した画像から13.1等の新天体(ASASSN-16ig)を発見しました。この天体の位置には前日の5.96日の画像には17.3等よりも明るい天体は存在しないことから、8月6日のうちに急激に明るくなったものと考えられます。

福岡県久留米市の西山浩一(にしやまこういち)さんと佐賀県みやき町の椛島冨士夫(かばしまふじお)さんのチームも8月8.532日(日本時間8日21時45分ごろ)に撮影した画像からこの天体を独立に発見しました。西山さんと椛島さんの観測によると、この天体の位置は以下のとおりです。

赤経  18h01m07.80s
赤緯 -26°31′43.4″ (2000年分点)

いて座の新星
いて座の新星の画像(撮影:清田さん)

千葉県の清田誠一郎さんや愛知県の山本稔さん、福岡県の高尾明さん、東京都の伊藤弘さんらによって報告されたこの天体の測光観測の結果によると、この天体の明るさは8日にはVバンドで12.8等、9日には11.8等で、発見時よりも明るくなったことがわかりました。

岡山県の藤井貢さんは8.558日に、ブラジルのCacellaさんは9.093日に、それぞれこの天体の分光観測を行いました。その結果、この天体のスペクトルには強いHα輝線の他、Hβや中性酸素の輝線が見られることがわかりました。またHα輝線はP Cygniプロファイルを示し、吸収線は輝線に対して秒速1700-2000km青方偏移していました。これらのスペクトルの特徴から、この天体は古典新星であることが判明しました。

これまでに報告された観測によると、この新星は8月10日に11.5等と発見後最も明るくなった後、11日には11.9等にやや暗くなりました。新星はいて座にある明るい星雲のM8の南およそ2度の位置にあります。この新星が明るくなり始めたと考えられる8月6日にこの付近を撮影した画像をお持ちの方は、新星が写っているかどうか調べてみてください。

いて座の新星の位置
いて座の新星の位置。クリックで拡大(「ステラナビゲータ」で表示)

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