ケレスに有機物が存在する形跡

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準惑星ケレスの北半球にある「エルヌテト・クレーター」の内部や周辺などに、有機物が存在する形跡が見つかった。

【2017年2月21日 NASA JPL

準惑星ケレスを周回探査している「ドーン」の観測から、ケレスに有機物が存在する形跡が見つかった。有機化合物は隕石中に見られたり、天体望遠鏡による観測でいくつかの小惑星に存在が示唆されたりしているが、探査機が周回軌道上から小惑星帯の天体に有機分子をはっきりと検出したのは初めてである。

ケレス上の有機物は1,000平方kmほどの領域に主に広がっている。とくに北半球に位置する直径約52kmの「エルヌテト・クレーター」の内部やクレーター南側の縁、クレーター周囲の南西部で顕著に見られ、その他にはクレーター北西部や400km離れた別のクレーターなどにも見られる。カラー画像で他より赤っぽく写るところに有機物が見られ、その関連性が調べられている。

エルヌテト・クレーター周辺
エルヌテト・クレーター周辺。色は強調されている(提供:NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA)

ケレスの組成は、水や有機物が豊富な隕石、とくに炭素質コンドライトと呼ばれるグループに分類されるものとの共通点が多い。今回の発見により、ケレスとこれらの隕石、およびその母天体との関連がさらに強まった。

データによると、有機物はケレスで作られたものと考えられる。これまでにケレスで見つかった炭酸塩や粘土は、水と熱が存在する環境下での化学作用がケレスで起こっていることを示しており、有機物も似たような環境で作られたのかもしれない。

今回の発見は、遠い昔のケレスに、生命に必要な環境と生命の元となった物質が存在したのではないかと思わせるものだ。以前の研究でケレスには、水和鉱物や炭酸塩、水の氷、アンモニア化物の粘土など水が必要な物質が見つかっている。明るく見える「オッカトル・クレーター」で見つかった塩や炭酸ナトリウムも、液体によって表面へ運ばれたと考えられている。

ほぼ2年にわたるケレス周回軌道上からの観測を終えたドーンは、現在は高度7520kmから9350kmの楕円軌道を飛行している。2月23日には高度2万kmで従来と異なる軌道面へと移り始め、新たな位置からのケレス探査を目指す。春の終わりにはドーンの背後に太陽が位置するようになるので、ケレスはこれまでになく明るく輝いて見える。おそらくまた、多くのことが発見されるだろう。

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