「はやぶさ2」、トリフネ表面からわずか400mをかすめた

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「はやぶさ2」による小惑星トリフネへのフライバイで、探査機がトリフネ表面から約400mの距離を通過し、太陽系天体フライバイでの最小距離記録を更新したことがわかった。

【2026年7月31日 JAXA (1)/(2)

小惑星探査機「はやぶさ2」は7月5日、拡張ミッションの最初の目標天体である小惑星トリフネのフライバイ(接近通過)観測に成功した(参考:「はやぶさ2」が小惑星トリフネへのフライバイに成功)。

拡張ミッションチームが今回のフライバイで得られたデータを詳しく解析した結果、トリフネへの最接近時刻は2026年7月5日18時30分00.31±0.03秒(日本時間、以下同)、最接近距離はトリフネの中心から約744m、表面から約400mと求められた。

フライバイ位置
トリフネへのフライバイの目標点(赤色の+印)と、実際にフライバイした位置(青色の+印)。右は今回得られたトリフネの3次元形状モデルに基づく概形。数値は今後の解析によって改定される可能性がある(提供:JAXA)

計画では最接近時刻を18時30分、最接近距離をトリフネの中心から800mとしていて、地上からの指令と探査機自身の判断によって、この目標点を通過するように計5回の航法誘導制御が行われた。実際の最接近位置と目標点とのずれは約120m、トリフネ中心からの距離のずれは約56mで、結果として、ほぼ想定通りの精度で「はやぶさ2」を誘導できたことになる。

過去の太陽系天体へのフライバイ探査で天体に最も接近したのは中国の「嫦娥2号」で、2012年12月13日の小惑星トータチス((4179) Toutatis)へのフライバイで、天体中心から1451m、表面から770mの位置を通過している。今回の「はやぶさ2」のトリフネへのフライバイはこの記録を塗り替え、太陽系天体へのフライバイとしては史上最小距離での通過となった。

今回の観測データから、トリフネの大きさは長軸約840m×短軸約340mと求められた。さらに、トリフネの公転軌道についても、一連の観測データによって誤差を減らすことができた。今回のフライバイ時刻におけるトリフネの軌道の誤差は、49.5kmから780mまで改良された。

今回のフライバイでは、「はやぶさ2」に搭載されているレーザー高度計(LIDAR)をトリフネに向けて発射し、探査機とトリフネの距離を2回計測することにも成功している。小惑星へのフライバイ探査で、LIDARでの測距に成功したのは世界初の快挙だ。

レーザー測距
フライバイ時に「LIDAR」で行われたレーザー測距の模式図。LIDARは毎秒1回の間隔でレーザー光を照射し、18時29分56.5秒および同57.5秒(最接近時刻の約4秒前と3秒前)の2回、レーザーがトリフネに当たって測距に成功した。得られた距離は約20km、15kmだった。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA、北海道大学、大島商船高等専門学校、千葉工業大学、国立天文台、総合研究大学院大学、京都産業大学)

これまでの小惑星フライバイでは、カメラで小惑星を撮影したり分光計でスペクトルを得たり、という受動的・光学的な観測が主だったため、天体の昼側から接近しなければならないといった制約があった。今回、秒速5.3kmという高速フライバイをしながらLIDARでの測距に成功したことにより、対象天体の日照条件などに左右されない、能動的にデータを得るフライバイ探査にも道を開いたといえる。

レーザーの照射位置
「LIDAR」のレーザー光が照射された方向と照射面積をトリフネ画像に重ねて描いた図。赤が反射光を検出できたデータ、青は検出できなかったデータ。右上から左下にかけて時間が進み、トリフネに近づくほど照射面積は小さくなる。詳細な位置・時刻は今後の解析で改定される可能性がある(提供:JAXA、北海道大学、大島商船高等専門学校、千葉工業大学、国立天文台、総合研究大学院大学、京都産業大学)

「はやぶさ2」はトリフネを通り過ぎた後、2027年12月に地球でのスイングバイを行うため、7月9日からイオンエンジンでの航行を始めている。今回のフライバイで得られたデータのうち、重要なものはすでに探査機から取得済みで、残りのデータは今後の運用の合間に地上に送信し、全て取得し終わるのは年末になる見込みだ。

小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星「トリフネ」フライバイ時に取得した成果に関する記者説明会(提供:JAXA)

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