「はやぶさ2」が小惑星トリフネを初撮影
【2026年6月25日 JAXA】
2020年に小惑星リュウグウから帰還した小惑星探査機「はやぶさ2」は、拡張ミッション「はやぶさ2♯」として、次の目的地である小惑星「トリフネ((98943) Torifune)」のすぐそばを7月5日にフライバイ(接近通過)観測する予定となっている。
「はやぶさ2」は6月20・21日に、望遠カメラ「ONC-T」を使ってトリフネの姿を初めて撮影した。撮影時のトリフネまでの距離は約700万km(地球‐月間の約18倍)で、トリフネの像の大きさはまだ1ピクセル以下だ。

「はやぶさ2」が初めて撮影したトリフネ(中央を下から上へ移動する光点)(提供:JAXA、千葉工業大学、日本スペースガード協会)
6月24日の記者説明会で、「はやぶさ2」拡張ミッションのチーム長を務める三舛裕也さんは、「『はやぶさ2』が地球に帰還してすぐに運用体制を引き継ぎ、5、6年にわたってトリフネを目指してやってきた。トリフネのファーストライト画像を見えた連絡を受けたときには一人でガッツポーズをした」と語っている。
説明会では今後のフライバイの詳しいシーケンスも発表された。フライバイの10日前(6月25日)から3時間前にかけて、地上からの指令で計4回の軌道誘導制御が行われ、2時間前から5分前までは探査機が自律的に軌道誘導を行う。

トリフネへのフライバイシーケンス。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA)
この軌道誘導制御では、トリフネの中心から800m離れた目標点を通過するように制御が行われる。これまでの地上観測で、トリフネの大きさは長径約700m(長半径約350m)のやや細長い形と推定されているため、2倍の誤差を見込んで長半径700m×短半径200mと仮定し、トリフネに衝突しないぎりぎりのコースを通過する計画となった。

最接近時点での目標点を描いた図。トリフネの中心から800m離れた位置(青色の楕円)を目指して軌道誘導制御が行われる。トリフネのサイズは、これまでの地上観測データを元に、誤差を2倍見込んで長径1400m×短径400mとして描いている。細かい形状や地形は想像で描かれたもの。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA)
これほど小惑星ぎりぎりの軌道を進む理由は、「はやぶさ2」がもともとリュウグウに長期滞在する「ランデブー観測」に特化していて、フライバイに適した観測機器を持たないためだ。「はやぶさ2」には、通常のフライバイ探査で使うような長焦点距離の望遠鏡や「流し撮り」ができるミラー機構などは備えておらず、望遠カメラ「ONC-T」の向きも固定されている。そのため、フライバイ中は探査機の姿勢を変えず、ほぼ進行方向を最短1秒間隔で連続撮影することとし、この条件でトリフネがなるべく多く画角に入るように、小惑星ぎりぎりを通ることになった。
これまでの彗星・小惑星のフライバイ探査では、天体への最接近距離は数百kmだった例が多く、今回のような超接近フライバイは、2012年に中国の「嫦娥2号」が小惑星トータチスの表面から約770mの位置を通過した例が唯一だ。三舛さんは「沖縄から北海道にある1円玉をレールガンで射貫くくらいの難しさ」と形容している。
フライバイ時の「はやぶさ2」の速度は、トリフネに対して秒速約5kmの猛スピードとなる。そのため、トリフネがカメラ上で2ピクセル以上の大きさに写り始めるのは最接近のわずか5分前からだ。そこで、「はやぶさ2」はトリフネの撮像だけでなく、最接近の1時間前から5分前までの間に、近赤外線分光計や中間赤外カメラ、レーザー高度計などでトリフネの科学観測も実施することにしている。
今回のトリフネへのフライバイには、小天体の衝突から地球を守る「プラネタリーディフェンス」(惑星防衛)の技術実証という側面もある。直径の小さな小惑星のすぐそばを高精度で通過させる技術があれば、天体に探査機を衝突させて軌道を変えることも可能になる。また、衝突まで時間の猶予がない場合に、すでに宇宙にいる探査機を取り急ぎ天体に向かわせて調査する「緊急調査(迅速偵察、fast reconnaissance)」の実証実験としても今回のミッションは役に立つ。
現在、「はやぶさ2」拡張ミッションチームでは、「はやぶさ2」への応援メッセージを全角32文字まで、探査機のメモリーに書き込むことができる「星の王子さまに会いにいきませんか ミリオンキャンペーン2♯」を7月31日まで行っている。また、トリフネの形の想像画を募集する「トリフネ想像コンテスト」や、トリフネへのフライバイをVRで体験できる「トリフネ・フライバイをVRで体験!」キャンペーンを全国の科学館と共同開催している(トリフネ想像コンテストの作品募集は終了)。こちらも要注目だ。
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