一般相対性理論が予言する銀河中心ガス円盤の歳差運動の兆候を観測

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X線分光撮像衛星「XRISM」などによる観測から、一般相対性理論が予言する「時空の引きずり」によって銀河中心ブラックホールの近傍のガス円盤が歳差運動した兆候がとらえられた。

【2026年7月14日 大阪大学

銀河中心に存在する、太陽の数百万倍から数十億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールに周囲のガスが落ち込むと、その途中で高温になって強いX線を放つ。このX線が周りの物質に照らされると、特性X線(蛍光X線)と呼ばれる決まったエネルギーのX線が放射される。

特性X線の低いエネルギー側に広がった成分は、ブラックホールのすぐ近くを高速で回転するガス円盤から出た光が、強い重力やドップラー効果によってゆがめられたものと考えられる。この低エネルギー成分を調べれば、ブラックホールのごく近くにある円盤の構造を探ることができる。しかし、ブラックホールから比較的遠い場所にある物質からも特性X線が出るため、ブラックホール近くからの信号と区別する必要がある。

また、質量が大きいブラックホールの周囲の円盤構造が変化するには長い時間がかかるため、数日程度の観測でブラックホール近傍の円盤の時間進化を追うためには、(超大質量ブラックホールではあるが)小さめのブラックホールを狙った観測が望ましい。

大阪大学の川室太希さんたちの研究チームは、りょうけん座の方向約1400万光年の距離にある矮小銀河「NGC 4395」の中心に存在するブラックホールに着目し、X線分光撮像衛星「XRISM」やX線天文衛星「NuSTAR」で観測した。NGC 4395の中心ブラックホールの質量は太陽の1万~10万倍程度と見積もられていて、短期間の変化を調べるのに適したターゲットだ。

NGC 4395
NGC 4395(撮影:バークレーさん

XRISMの分光装置「Resolve」は、ブラックホールから遠いところにあるゆっくりと動く物質から出る細い特性X線と、ブラックホール近くの円盤から出る広がった特性X線を分けて調べることができる。この性能を活かして鉄の特性X線のエネルギー分布を詳しく調べたところ、期待通りに、低エネルギー側に広がった成分が見つかった。また、特性X線の形が時間とともに変化していることも突き止められた。

特性X線のスペクトル
(上)NGC 4395中心部の特性X線のスペクトル。過去のX線天文衛星「すざく」(灰)では見えていなかった特徴がXRISMのResolve(黒)では見分けられ、ブラックホール近傍の円盤からの広がった特性X線と遠い場所からの細い特性X線が区別できる。右上はそれぞれのX線の放射領域を表したイラスト。
(下)鉄の特性X線の約半日毎の時間変化。円盤からの広がった成分(オレンジ線)が変化している。画像クリックで表示拡大(提供:大阪大学リリース、以下同)

これらの結果から、円盤の内側がブラックホールに近づいている様子がわかり、さらに円盤の見かけの傾きが約2.4日周期で変化する兆候も見られた。この周期的な変化は、ブラックホールの自転が時空も回転させるために、傾いた円盤が振り回されてコマのように首振り運動をする「レンズ・ティリング歳差」で説明されるという。一般相対性理論の効果による歳差運動によって円盤が揺れ動く兆候を、円盤からの鉄の特性X線の時間変化から世界で初めてとらえた可能性を示す成果だ。

円盤の傾きの時間変化
ブラックホール近傍の円盤の傾きの、時間変化の模式図。ブラックホールの自転軸(黒矢印)の周りを円盤の回転軸(紫矢印)が回る。この歳差運動の結果、円盤の見え方が変わり、特性X線が広くなったり狭くなったりする

今後、他のブラックホールも観測することで、円盤の歳差運動が普遍的なものかどうか、歳差運動はガス流入にどのように影響を及ぼし、ブラックホールの成長に関わっているのか、などの理解が進むと期待される。

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