「はやぶさ2」カプセルの大気圏再突入を生配信

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12月6日に地球に帰還する「はやぶさ2」カプセルの映像がオーストラリアで撮影され、インターネットで生配信されることが発表された。

【2020年10月23日 JAXA はやぶさ2プロジェクト

小惑星リュウグウに2回の着陸を行って表面のサンプルを採取した探査機「はやぶさ2」は、10月23日現在、地球まであと1700万kmの距離にいる。現在はスラスターを噴射して探査機の軌道を微修正する最終誘導フェーズに入っている。この軌道修正は4回(TCM-1~TCM-4)予定されていて、10月22日にTCM-1が予定通り完了した。

リュウグウのサンプルを納めたカプセルは、12月5日14~15時(日本時間、以下同)に「はやぶさ2」本体から分離される。カプセルを分離した「はやぶさ2」は同日15~17時に最後の軌道修正「TCM-5」を行って、地球大気圏に再突入する軌道から離脱する。

カプセル
大気圏に再突入する「はやぶさ2」カプセルのイラスト。(左上・右上)高度200~30kmではカプセルは発光し、火球として見えると予想される。(左下)高度約10kmでパラシュートが開く。ここでカプセルを熱から防護していたヒートシールドが分離する。また、位置を知らせるビーコン(電波信号)の発射が開始される。(右下)地上に着地したカプセルは、ビーコンの受信方向をもとにヘリコプターやドローンで捜索され、回収される。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA。地球帰還解説動画より)

一方、カプセルはそのまま大気圏に再突入し、12月6日2~3時にオーストラリア・南オーストラリア州にある「ウーメラ管理区域(Woomera Prohibited Area; WPA)」にパラシュートで着地する予定だ。大気圏に再突入するカプセルは、地上からは火球のように見えると予想される。ただし今回はカプセルのみの再突入であるため、探査機本体も再突入した2010年の「はやぶさ」初号機ほどには火球が明るくならないかもしれない。

JAXAでは、12月5日・6日の2回にわたってJAXA相模原キャンパスからのライブ配信イベントを行う。イベントはYouTubeの「JAXAチャンネル」などで配信される。

5日13時30分からのイベントでは、カプセルの分離や、地球から離脱する「TCM-5」軌道修正の様子が管制室から実況される。また、いくつかの会場でパブリックビューイングも行われるという。

6日深夜1時30分~3時30分に行われる2回目のライブイベントでは、WPAの北端にある町・クーパーペディで撮影されたカプセルの火球映像が衛星中継され、配信される。カプセルからのビーコン(電波信号)が受信できたかどうかも伝えられることになっている。着地したカプセルの捜索は6日の日の出以降にヘリコプターなどで行われる。

現在、オーストラリア政府は新型コロナウイルス対策として、同国の永住者やその家族を除き、外国人の入国を原則として禁止している。そのため、JAXAの「はやぶさ2」カプセル回収隊は特例で入国できるものの、一般の外国人や日本からの取材陣が渡航して現地でカプセルの再突入を見届けることはほぼ不可能だ。

ただし、カプセルの再突入前と再突入後に開かれる記者会見では、ウーメラにもサテライト会場を設けて回収隊のメンバーが登壇することになっており、これを現地のメディアや支局が取材することはできる。

WPA
カプセルが着地するオーストラリアのウーメラ管理区域(提供:JAXA)

「はやぶさ2」カプセルが着地するWPAは、オーストラリア国防省が管理する立入制限区域で、面積は南オーストラリア州全体の11%(九州の2.9倍)を占める。空軍基地やミサイル試験場などの軍事施設が置かれ、民間人の立ち入りが制限されている。WPAの域外であれば、オーストラリア在住者が火球の観望や撮影を行うことは可能だ(ただし現在は州間の移動も一部制限されているため、出発州によっては南オーストラリア州に入れない場合がある)。WPA内を縦断するスチュワート・ハイウェイは、カプセル再突入前後の時間帯には通行止めとなる。

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