銀河中心部の過剰なガンマ線がダークマターに由来することを否定

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天の川銀河の中心部から放出されているガンマ線はダークマターによるものではないとする研究が発表された。ダークマターの性質に強い制限を与える結果だ。

【2020年9月18日 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構

2008年6月に打ち上げられたガンマ線天文衛星「フェルミ」は、その後ほどなくして天の川銀河の中心方向がガンマ線で過剰に輝いていることを突き止めた。既知のガンマ線源ではその強さは説明できない。天の川銀河の中心部にはダークマター(暗黒物質)が高密度で存在しているとされていることから、一部の研究者はダークマターの有力な候補の一つとされているWeakly Interacting Massive Particle(WIMP)同士が衝突して対消滅する際の高エネルギーガンマ線をとらえたのではないかと考えてきた(参照:「ダークマター予測と一致する、銀河中心部のガンマ線」)。

フェルミの観測データ
ガンマ線天文衛星「フェルミ」の観測データ。天の川銀河中心部からの過剰な高エネルギーガンマ線の放出の様子を示す(提供:Oscar Macias、以下同)

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)のOscar Maciasさんたちの研究チームは、このフェルミの観測データについて分析と徹底的なモデリング演習を行った。過剰なガンマ線放出を引き起こすとされる現象としては、銀河中心での星形成、分子ガスによる宇宙線の制動放射、中性子星の発するミリ秒パルサーなどが挙げられる。従来の研究ではこれらのモデルをカバーしきれていなかった。

「銀河中心の分子ガス、星形成に関係する恒星の質量放出、低エネルギーの光子を散乱させ逆コンプトン散乱を引き起こす高エネルギー電子についてなど、銀河中心で起こる様々なモデルを全て調べあげました。そして新しいモデルを全てまとめてガンマ線の過剰放出について調べるのに3年以上かかりました。その結果、ダークマターの対消滅によって生じたという可能性の余地がほとんどないことがわかったのです」(Maciasさん)。

また、ダークマターの対消滅が起こっているのであれば、ガンマ線の放射は天の川銀河中心から滑らかな球形もしくは楕円形に分布すると予測される。しかし、フェルミが観測したガンマ線の過剰放出は棒のように一方向に伸びた分布を示していた。加えて、天の川銀河中心方向の膨らみである「バルジ」を詳しく見ると、星は非対称な箱のように分布している。Maciasさんたちは、この星の分布の形状では、ダークマターの対消滅によってガンマ線の過剰放出が起こる可能性の余地はほとんどないことも示した。

天の川銀河中心で星が箱型に分布するイメージ
天の川銀河中心部で星が「箱型」に分布する様子を示すイラスト

今回の成果はダークマターの存在自体を否定するものではないが、その候補として最も人気のあるWIMPについて再考をうながし、他の考え方を後押しする結果となりそうだ。「私たちの研究では、存在するダークマターの粒子の種類を制限しています。銀河におけるダークマターの存在を示す証拠となる複数の手がかりは、我々の仕事によって揺らぎませんし影響を受けていません」(米・カリフォルニア大学アーバイン校 Manoj Kaplinghatさん)。