隕石衝突で鉱物が縮む瞬間をX線でとらえた

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隕石衝突を模した実験で、鉱物の結晶が瞬時に変化する様子が、加速器の放射光を使った超高速度撮影でとらえられた。

【2020年9月14日 高エネルギー加速器研究機構

誕生したばかりの太陽系の中では、微惑星と呼ばれる小天体同士が衝突・合体して惑星が形作られた。また、惑星形成が終わった後の約41億~38億年前にも、火星より内側の惑星や月に大量の隕石が降り注ぐ「後期隕石重爆撃期」と呼ばれる時代があったと考えられている。約6500万年前には、隕石衝突によって恐竜などの生物が大量絶滅した証拠が見つかっている。過去の隕石衝突の痕跡から衝突の詳しい情報を得ることは、惑星の歴史を理解する上できわめて重要だ。

太古の隕石衝突の痕跡は、クレーターなどの衝突地形や落下した隕石の破片という形で残されていることが多いが、衝突を受けた地球表面の岩石にもしばしば変化がみられる。バッデレイアイト(Baddeleyite、バッデレイ石)と呼ばれる鉱物も、そうした痕跡を残すと考えられている鉱物の一つだ。バッデレイアイトはジルコニア(二酸化ジルコニウム、ZrO2)の結晶の一種で、様々な岩石に含まれている。過去の研究で、カナダの隕石衝突クレーターから見つかったバッデレイアイトでは、結晶の粒が同じ方向に並んでいることが明らかになっている。これは隕石衝突の衝撃によって結晶の構造が瞬時に変化し、その後元に戻った痕跡だと推測されているが、こうした衝撃で実際に結晶構造がどう変わるのかを直接観察した研究はこれまでなかった。

隕石衝突履歴調査のイメージ
隕石衝突の歴史を研究する手法のイメージ。衝突クレーターやそこで見つかる岩石を調べると過去の隕石衝突の様子を知ることができるが、そのためには、衝突の衝撃を受けた瞬間に鉱物の結晶構造がどのように変化するかを詳しく理解しておくことが大事だ(提供:プレスリリースより、以下同)

高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の高木壮大さんたちの研究グループは、同研究所の放射光実験施設「フォトンファクトリー」にある放射光源用加速器「PF-AR」を使い、バッデレイアイトが隕石衝突を模した衝撃波を受けたときの反応を、ナノ秒(10億分の1秒)というきわめて短い時間スケールで撮影する実験を行った。

結晶にX線を当てると、結晶に含まれる原子によってX線の進路が曲げられる「X線回折」という現象が起こる。曲げられたX線が作る像を見れば、その結晶の原子がどのように並んでいるのかを正確に求めることができる。高木さんたちはバッデレイアイトの結晶に強いレーザー光を当てて衝撃波を発生させ、同時に「PF-AR」の強力なX線でこの結晶のX線回折像を撮影することで、結晶の中を衝撃波が伝わる瞬間の変化を捉えることに成功した。

X線回折写真
(左)衝撃波を受けた結晶の、経過時間ごとのX線回折像。バッデレイアイトに特徴的なX線回折線をbで表す。衝撃を受けて圧縮されている最中にだけ、2つのbの線の間に高圧で安定な構造に由来する別のX線回折線が見られる(矢印)。(右)X線回折写真の断面図の時間変化

実験の結果、バッデレイアイトの結晶が衝撃波を受けて圧縮されると、結晶の構造が「単斜晶系」と呼ばれる形から、より高圧の環境で安定な「直方晶系」という形に変わり、すぐに元の構造に戻ることがわかった。この構造の変化は圧力が3.3万気圧を超えた時点で起こり、わずか10~20ナノ秒という短い時間の間に生じることも明らかになった。

バッデレイアイトの結晶構造変化
X線回折像から導かれたバッデレイアイトの結晶構造。緑はジルコニウム(Zr)、赤は酸素(O)の原子。(左)衝撃を受ける前、(右)衝撃を受けた後。結晶格子のサイズが小さくなり、より高圧で安定な直方晶系と呼ばれる構造に変化している

今回の研究成果は、岩石に含まれる鉱物が隕石衝突のような強い衝撃を受けたときに、どの程度の衝撃でどのような変形を受けるかという問題を正確に理解する上で、非常に重要なものだ。こうした情報の積み重ねは、太陽系の天体がどのように形作られ進化してきたかを解き明かすことにつながると期待される。

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