ドローンとAIで隕石を発見

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火球の観測から予測された落下地点をドローンで撮影し、機械学習で画像を判別するという手法で、初めて隕石が発見された。

【2022年3月18日 カーティン大学

2021年4月1日、豪・西オーストラリア州カイボステーション (Kybo Station) の近くで火球が観測された。この地域はほぼ無人の砂漠地帯だが、豪・カーティン大学宇宙科学技術センターがオーストラリア南部に設置している火球の自動観測システム「砂漠火球ネットワーク」の2つの観測地点でこの火球の撮影に成功し、軌道が計算された。予想された落下エリアの広さは約5.1km2で、地上に落下した隕石の質量は150~700gと予測された。

そこで、同センターのSeamus Andersonさんを中心とする研究チームは落下予想地域で4日間にわたって隕石の捜索を行った。通常、隕石捜索では数人の人間が5~10mおきに並んで歩きながら捜索範囲をくまなく探すが、非常に労力がかかり、隕石を発見できる確率は2割ほどだという。

一方、Andersonさんたちは現地にドローンとコンピューターを持ち込み、まず落下予想地域を上空からドローンのカメラで撮影した。そして撮影した画像をコンピューターに送り、機械学習の手法で隕石を判別できるように訓練した人工知能(AI)で隕石が写っていないかを検出するという方法をとった。

発見地点
隕石の発見地点に立つAndersonさんと、今回発見された隕石(指を指している黒い物体)(提供:Curtin University)

「私たちのAIアルゴリズムは過去の隕石捜索のデータを学習していますが、さらに、過去に回収された隕石を現地に持参して落下地点でそれを撮影し、その画像データを使って学習を深めることもしました。今回の方法を使えば、作業者の数や時間を約1/10に減らすことができますし、発見率もずっと上がります。実際、今回の探索ではわずか4日間で隕石を発見できました」(Andersonさん)。

AIによって隕石らしき物体が写っていると判定された場所には小型のドローンを再び飛ばし、より高い解像度で撮影を行った。その結果、研究チームは捜索開始から4日後についに70gの隕石を発見した。回収された地点は、最初に計算された火球の最終落下軌道からわずか50mしか離れていなかった。

隕石
(左上・右上)今回発見された隕石。隣に置かれたペンの長さが約15cm。(下)ドローンの捜索画像から検出された隕石。黄色の四角のサイズは1辺が22cm。画像クリックで表示拡大(提供:Anderson et al. (2022))

今回のように火球の映像から太陽系内での軌道を計算できる隕石は、故郷である太陽系内の特定の場所についての地質学的なサンプルとなり、太陽系の性質を理解する上で非常に役に立つ。また、宇宙科学以外の面でも隕石の研究は有用だとAndersonさんは言う。

「たとえば隕石にはしばしばコバルトなどの希少元素が多く含まれています。こうした元素はバッテリーなどの材料としても重要です。地球外の物質がどのように太陽系全体に分布しているかをより深く理解することで、地球に存在する限りある資源をかき集めたり、貴重な生態系を傷つけたりすることなく、将来は稀少資源を小惑星で採掘できるようになるかもしれません。また、私たちの手法は野生生物の管理や保護にも使えるでしょう。このアルゴリズムは動植物など、隕石以外のものを検出するように学習させることも容易です」(Andersonさん)。