太陽系で最古の水の証拠、隕石から検出
【2021年1月26日 ルプレヒト・カール大学ハイデルベルク】
フレンスブルク隕石は、2019年9月にドイツ北部で火球が目撃された次の日に、デンマークとの国境に位置するフレンスブルク市内で見つかった。質量は24.5gで黒い小石のような外見をしている。この隕石は独・ミュンスター大学のAddi Bischoffさんの元へ届けられ、同氏が率いる国際的な研究チームによって分析が続けられてきた。
フレンスブルク隕石。隕石の表面には、地球大気に突入した際に高温で表面が融けてできた「溶融皮殻」と呼ばれる薄い層が見られる(提供:A. Bischoff / M. Patzek, Universität Münster)
初期の分析により、隕石の年代が約45.6億年であること、隕石のタイプが炭素質コンドライトと呼ばれる珍しいものであることがわかった。炭素質コンドライト隕石には、液体の水が存在する環境下で生成される鉱物である炭酸塩が含まれている。つまり、約45.6億年前という太陽系誕生から間もない時期に、この隕石の起源となった天体には水が存在したことが判明したのだ。
ただし、同程度に古い炭素質コンドライトは既にいくつか見つかっており、フレンスブルク隕石の炭酸塩鉱物がそれらよりも古いかどうかを突き止めるにはさらなる調査を要した。
Bischoffさんたちは炭酸塩に含まれる放射性同位体の量を調べ、年代を詳しく測定した。「隕石中の炭酸塩の粒子はとても小さいので、こうした年代測定は非常に困難でチャレンジングなものです」(独・ルプレヒト・カール大学ハイデルベルク 地球科学研究所 Thomas Ludwigさん)。
分析の結果、フレンスブルク隕石の炭酸塩は45億6460万(±100)万年前に形成されたことがわかった。これは既知の古い炭素質コンドライト隕石と比べても、少なくとも100万年以上古い。
「精密な年代測定によって、フレンスブルク隕石の母天体と炭酸塩鉱物は、太陽系内に初めて固体の天体が生まれてからわずか300万年後に形成されたことがわかりました。つまり、これらは太陽系初期に惑星状天体に液体の水が存在したことを示す、最古の証拠です」(ルプレヒト・カール大学ハイデルベルク 地球科学研究所 Mario Trieloffさん)。
〈参照〉
- Heidelberg University:Oldest Carbonates in the Solar System
- Geochimica et Cosmochimica Acta:The old, unique C1 chondrite Flensburg - insight into the first processes of aqueous alteration, brecciation, and the diversity of water-bearing parent bodies and lithologies 論文
〈関連リンク〉
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