観測成功!小惑星アルタエアによる恒星食
【2019年11月21日 星ナビ編集部】
11月14日深夜、小惑星アルタエア((119) Althaea)による、おうし座γ星プリマヒヤドゥム(3.8等)の食が起こり、好天に恵まれた恒星食帯付近の千葉県南部と和歌山県(潮岬)で多数の観測成果が得られた。星ナビ11月号「Observer's NAVI」にて紹介したこの絶好の恒星食は、対象星が4等星で肉眼級の現象だった。これほど明るい恒星食が小惑星によって隠される機会はめったになく、ほぼ10年に一度のチャンスだった。
これまで報告された観測者の配置。赤線=予報センターライン、青線=掩蔽帯の南北限界線、緑線=掩蔽帯の誤差(1σ)。赤丸は減光を観測した地点、青丸は通過を観測した地点。恒星食帯は18kmほどの誤差(1σ)が見込まれていたが、恒星食はほぼ予報通りに起こった。画像クリックで表示拡大(地図画像の出典:Google, INEGI)
報告に基づいた暫定的な整約結果(2019年11月21日現在)。小惑星の南半球は、日本では海上の現象のため観測が得られていないが、恒星食帯延長上の中国(約10地点)で観測が得られたとの情報がある。主に星食のメーリングリストJOINに報告されたデータによる。画像クリックで表示拡大
今回の現象は、隠す側の小惑星の形状に関する情報が得られることはもちろんのこと、隠される側の恒星に関しても特別な情報がもたらされる可能性が大きい。プリマヒヤドゥムは実に興味深い恒星だ。まず、この星はかつて光学・近赤外干渉計により視直径(2.7mas)が測定されたことのある巨星である(1mas=0.001秒角)。今回のような明るい恒星では、恒星食の観測から星の視直径を求められる可能性があり、多角的で貴重な成果を期待できる。また、この恒星は月による星食から観測(1978年)された伴星の存在が記録されているものの、存在が否定的な観測もあり、その真偽と、もし伴星が存在するならその素性が明らかになる可能性がある。
本記事で紹介する観測成果は、これまでに得られた観測から小惑星の形状を暫定的に解析したものだが、今後もさらなる検証が進められる。それらの成果は近刊の「星ナビ」にて紹介する予定だ。
この恒星食を観測された天文ファンはまだまだ多いと推察される。なかでも、恒星食帯で観測、動画データを取得した方は、映像から天文学的に重要な成果を得られる可能性がある。ぜひ筆者(早水勉/佐賀市星空学習館)または相馬充氏(国立天文台)までデータ提供くださるようご協力お願い申し上げます。
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