観測史上最遠の合体銀河の証拠

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131億光年彼方の銀河に存在する酸素、炭素、塵から放射される電波がアルマ望遠鏡により観測され、3種類が揃った検出例として最遠の記録となった。銀河が合体中であることも確かめられ、合体銀河としても観測史上最遠となった。

【2019年6月21日 アルマ望遠鏡早稲田大学国立天文台

138億年前にビッグバンで誕生した直後の宇宙には、水素とヘリウム(と少量のリチウム)だけが存在しており、宇宙で最初の恒星はこれらの元素から作られた。その後、恒星内での核融合反応によって炭素や酸素が作られ、これらの重い元素は恒星の超新星爆発によって周囲にまき散らされた。

まき散らされた元素の一部は、互いに結びついて微粒子(塵)を作る。こうした元素や塵は水素やヘリウムと共に、次世代の星の材料となる。初期宇宙における酸素や炭素の発見は、それ以前の時代の星の誕生と死を知る手がかりとなることから、さかんに観測研究が行われている。

また、星の大集団である銀河はお互いに衝突、合体を繰り返して大きくなってきたと考えられており、こうした銀河の進化史を明らかにすることも天文学の重要な課題である。

早稲田大学の橋本拓也さんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を用いて、ろくぶんぎ座の方向131億光年彼方にある(=131億年前の宇宙に存在する)銀河「B14-65666」を観測した。橋本さんたちはこれまでにも、宇宙誕生から数億年以内という初期宇宙の銀河を観測し、銀河の形成と成長の過程を明らかにする研究を進めてきている。

観測の結果、この天体に存在する酸素、炭素、塵が放つ電波の検出に成功した。アルマ望遠鏡などによる観測で、他の遠方銀河でも酸素や塵の電波が検出されていたことはあったが、3種類の物質が放つ電波が揃ってとらえられたものとしては、今回の観測が最も古い時代の(最も遠い)天体となる。

合体銀河「B14-65666」
合体銀河「B14-65666」の擬似カラー画像。アルマ望遠鏡で観測した塵、炭素、酸素の分布をそれぞれ赤、黄、緑で、ハッブル宇宙望遠鏡で観測した星の分布を青で表している(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope, Hashimoto et al.)

以前のハッブル宇宙望遠鏡(HST)による赤外線観測で、この天体はほぼ同じ規模の2つの銀河で構成されていることが明らかになっていた。今回の観測では酸素、炭素、塵がいずれも、HSTが撮影した2つの銀河の位置に塊を形作って存在していた。また、電波の波長の引き伸ばされ方を調べることで、2つの銀河が地球からほぼ同じ距離にあることが確かめられ、これらの銀河が実際に並んで存在していることがはっきりと示された。

「複数のデータと解析の結果によって、この銀河が衝突・合体をしているという大きな結論が得られました。宇宙初期にある銀河の荒々しい様子が手にとるようにわかり感動しました」(橋本さん)。

B14-65666の想像図
アルマ望遠鏡による観測結果をもとに描かれたB14-65666の想像図(提供:国立天文台)

研究チームではさらに、2つの銀河に含まれる星の総質量が太陽約8億個分に相当することを導き出した。天の川銀河はおよそ1000億太陽質量なので、B14-65666は非常に小さい銀河であることがわかる。

その一方で、この銀河では天の川銀河の100倍ほどのペースで星が生み出されていることも明らかになった。これは、130億年以上昔の宇宙に存在する銀河のなかでは大きな値であり、同時代の一般的な銀河よりも星形成活動が活発であるといえる。

星形成が活発になる原因の一つとして、銀河の衝突・合体が挙げられる。銀河が衝突すると、それぞれの銀河に含まれていたガスが圧縮され、星が生まれやすい状況が作られる。B14-65666は、2つの銀河が接するほど近くにあること、活発な星形成活動を起こしていることから、まだ小さな2つの銀河が互いに衝突し合体しつつあるところであると結論付けられた。

このような合体銀河はこれまでにも数多く見つかっているが、B14-65666はその中でも最古の(最も遠い)ものだ。初期宇宙に合体しつつある銀河がとらえられたことは、銀河進化の歴史の始まりをひも解くという意味でも重要な成果である。

「これほど遠方の銀河からの酸素、炭素、塵を初めて全部そろえることができたのは、快挙といえます。今後、さらに窒素や一酸化炭素分子を検出し、銀河の形成と進化や、その中での元素・物質の蓄積過程の解明を目指します」(早稲田大学 井上昭雄さん)。