かみのけ座銀河団中に800個以上の「超暗黒銀河」

このエントリーをはてなブックマークに追加
すばる望遠鏡アーカイブデータの解析から、かみのけ座銀河団の中に854個もの「超暗黒銀河」が発見され、銀河団内での分布や銀河の中にある星の種族が明らかになった。

【2015年6月23日 すばる望遠鏡Stony Brook University

国立天文台ハワイ観測所では1999年の観測開始以降、すばる望遠鏡で得られたすべての観測データを保管し、観測後1年半以上経ったデータはすべて全世界に公開している。ニューヨーク州立大学および国立天文台の研究者からなる研究チームは、そのアーカイブデータ中から、かみのけ座銀河団中に854個もの「超暗黒銀河」を発見した。

かみのけ座銀河団の中心付近
かみのけ座銀河団の中心付近(6分角×6分角の領域)。すばる望遠鏡によるB, R, iバンド画像を合成した擬似カラー画像。黄色の丸:昨年末に見つかった47個の超暗黒銀河のうちの2つ/緑色の丸:すばる望遠鏡アーカイブデータから発見された超暗黒銀河(提供:国立天文台)

超暗黒銀河は、星の光だけ見ると天の川銀河の1000分の1しかないにもかかわらず、大きさは天の川銀河と同程度にまで広がっているという、非常に淡い銀河だ。光で見える物質の質量はわずか1%以下で、宇宙の平均と比較しても極端に低い。銀河形成後に何らかの形で星の材料となるガスが失われ、星を作るのをやめてしまった結果だと考えられている。超暗黒銀河が銀河団に特に多く存在することから、ガスが失われた原因は銀河団という環境に特有のものであると研究チームは指摘している。

銀河内部の星の分布や色を測定した結果、超暗黒銀河は古い天体であることが判明した。さらに、銀河団中での分布は他の銀河と同じように中心集中していることから、超暗黒銀河が銀河団内に古くから存在していたらしいこともわかった。

すばる望遠鏡の観測領域と、今回発見された超暗黒銀河の分布
(左)すばる望遠鏡の観測領域(背景はDSS)。水色の領域が1枚目画像の範囲。(右)青と黒の丸:今回の研究で見つかった超暗黒銀河(青は特別に大きいサイズのもの)/赤い×印:昨年初めて発見された47個の超暗黒銀河。クリックで拡大(提供:国立天文台、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校)

超暗黒銀河の大量発見は「お宝発掘」として世界中の研究者の注目を集めており、銀河形成の研究に重要な天体となると期待されている。研究チームの幸田仁さん (ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校) は「今後の分光観測によって星形成の歴史を研究し、超暗黒銀河の形成過程を探りたい」と語っている。

また、超暗黒銀河中で99%以上を占める暗黒物質の分布は、銀河内の星の運動を測定して探ることができるが、超暗黒銀河は淡く広がっているため、すばる望遠鏡をもってしても星の運動の観測は非常に難しい。日本など5か国の協力で建設が始まっている次世代超大型望遠鏡TMT(Thirty Meter Telescope、30m望遠鏡)に大きな期待がかかる。