観測史上最遠方、133億光年かなたとみられる銀河

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【2012年11月19日 ESA/Hubble

ハッブル宇宙望遠鏡と赤外線天文衛星「スピッツァー」、そして自然界のズームレンズを利用した観測により、これまで知られている中で最も遠い、133億光年かなたとみられる銀河が発見された。


大質量銀河団と遠方銀河

大質量銀河団の重力を通して見える遠方銀河(左枠)。重力レンズ効果で拡大された3つの像が見える。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and M. Postman and D. Coe (Space Telescope Science Institute), and the CLASH team)

CLASH」プロジェクト(ハッブルによる銀河団拡大観測および超新星サーベイ)で発見されたこの銀河は、ビックバンからわずか4億2000万年後のものとみられている。つまり、この銀河の光は約133億3000万年の時間を経て地球にたどり着いたのだ。

これだけ遠い銀河は本来なら非常に暗く観測することができないが、この銀河の80億光年手前に大質量銀河団があり、その強い重力によって光が屈折し拡大された3つの像が観測された(画像)。

「MACS0647-JD」と名付けられたこの銀河の幅はわずか600光年未満で(天の川銀河は直径約15万光年)、質量も天の川銀河の星を全て合わせたものの0.1%から1%程度に過ぎない。銀河の初期段階にあるとみられる。

「この天体は銀河の部品のようなものかもしれません。以後130億年の間、数十回、数百回、もしくは数千回の合体を通して、現在のような大規模な銀河となったのでしょう」(米宇宙望遠鏡科学研究所のDan Coeさん)。

こういった遠方銀河は近傍の赤い天体と似通って見えるが、研究チームでは数ヶ月の間慎重な検証を行い、遠方の銀河に違いないという結論を出した。

遠方の銀河ほど高速で遠ざかるため、その光の波長は伸びて赤みを帯びる「赤色偏移」を見せる。様々な波長域に対応したハッブル宇宙望遠鏡の17のフィルターを通した観測で、この銀河が強い赤色偏移を示していることがわかった。さらに赤外線天文衛星「スピッツァー」の遠赤外線画像では明るく見えなかったことから、まぎれもなく遠方の銀河であることが確認された。

銀河までの距離を確実に知るためには、光を細かい波長に分離して「分光赤色偏移」を測定する方法があるが、MACS0647-JDは非常に遠く暗いため、精度は落ちるがより暗い天体に適用できる「測光赤色偏移」を測定する方法が採られている()。そのためこの天体の距離は「参考記録」ではあるが、この小さな銀河が最遠方天体の記録ホルダーであることは、どの観測結果からも示されている。

注:「測光赤色偏移」 測光からスペクトルエネルギー分布(SED)を求め、既知の銀河の中で最も一致するSEDの赤方偏移の値を採用する距離推定方法。

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