JWSTの初期科学観測ターゲットが明らかに

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2019年春に打ち上げが予定されているジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の、初期科学観測のターゲットが明らかにされた。

【2017年11月17日 NASA

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の後継機であるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、NASA、ヨーロッパ宇宙機関、カナダ宇宙庁による国際プロジェクトで、2019年春に南米フランス領ギアナのギアナ宇宙センターから打ち上げられる。JWSTの科学観測開始から最初の5か月以内で、世界中の研究者が初期データを利用できるようになる見通しだ。

JWSTの初期観測プログラムの観測ターゲットには、木星とその衛星の調査、生まれたての星の周囲で形成される有機分子探し、銀河の中心に潜む超大質量ブラックホールの質量の計測、初期宇宙に存在する赤ちゃん銀河を捜すことなどが含まれている。この「DD-ERS(Director's Discretionary Early Release Science)」プログラムに対しては今年の8月までに100以上の観測提案が提出され、そのうち460時間の観測時間を要する13のプログラムが識者らによる検討を経て選ばれた。DD-ERSでは、すべての科学コミュニティがJWSTの観測データへアクセスできるようになり、データの分析の機会が与えられ、追加観測の検討・計画につなげられる。

JWST観測対象のイメージイラスト
JWST観測対象のイメージイラスト。中心がJWST、周囲は観測ターゲットとなる天体の代表的なイメージや観測データの例(提供:NASA, ESA, and A. Feild (STScI))

JWSTによる観測において最も期待が寄せられている分野の一つが系外惑星だろう。中心星の前を系外惑星が通過するトランジット現象を近赤外線分光器を使って観測し、惑星大気を構成する物質の痕跡を探すことができる。まず木星サイズのガス惑星を観測し、その結果を利用して地球のような岩石惑星の観測も計画される予定だ。その大気組成からは、生命の存在を許す環境に関するヒントが得られるかもしれない。

JWSTは遠方宇宙の銀河も調べる。遠方から届く銀河の光は宇宙膨張によって赤方偏移し、赤外線として観測されるのだが、その波長域はHSTで検出できる範囲を超えているのでJWSTには大きな期待がかかる。また、銀河団の重力による重力レンズ現象の観測では、さらに遠くに位置する背景の銀河からの光を調べることができる。さらに、HSTによって観測が行われた「フロンティア・フィールド」と呼ばれる空域もターゲットとなっている。HSTの観測結果を補い、多くの銀河に関する新しい情報が提供されることになる。

「最高に興味深い観測ターゲットのリストを見て、観測結果を早く知りたいという気持ちが高まり、胸が躍る思いです。新たな発見が、私たちを大いに驚かしてくれることを期待しています」(JWSTプロジェクトサイエンティスト John C. Matherさん)。