ダークマターの分布をJWSTで詳細にとらえた

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ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で80万個の遠方銀河をとらえた画像から、ダークマターの分布がきわめて高い解像度で得られた。

【2026年2月5日 NASA JPL

光で観測できない謎の物質「ダークマター」の分布を、NASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)によって描き出した新たな観測成果が発表された。

NASAジェット推進研究所(JPL)のDiana Scognamiglioさんを中心とするチームは、これまでに15基以上の地上望遠鏡と宇宙望遠鏡で観測されている「宇宙進化サーベイ(COSMOS)」の対象領域で、詳細なダークマターの分布図を得ることに成功した。場所はろくぶんぎ座の一角で、領域の広さは満月2.5個分になる。今回得られたデータは、ダークマターの分布図としてはこれまでで最も詳しく高解像度な画像の一つだ。

銀河とダークマターの分布
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で撮影されたCOSMOS領域の画像に、解析からみちびかれたダークマターの分布(青色)を重ねた画像。約80万個の銀河が光点として写っている。画像クリックで表示拡大(提供:NASA/STScI/J. DePasquale/A. Pagan)

COSMOS領域では2007年に、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)によって最初のダークマター地図が得られていた。今回、ScognamiglioさんたちはJWSTの中間赤外線カメラ「MIRI」を使って合計255時間にわたる観測を行い、約80万個の銀河を同定した。これは、過去にこの領域を地上望遠鏡で観測して見つかった銀河数の約10倍、HSTで見つかった銀河数の約2倍になる。これらの銀河の中には今回初めて見つかったものも含まれている。

Scognamiglioさんたちは、この大量の銀河像の形に注目し、遠方の銀河の形が手前の物質分布によってごくわずかに歪められる「弱い重力レンズ効果」から、ダークマターの分布を描き出した。

「これまでは,ぼやけたダークマターの画像を見ていました。JWSTの驚くべき解像度のおかげで、ついに目に見えない宇宙の構造の『足場』を、驚くほど細かく見ることができています」(Scognamiglioさん)。

HSTとJWSTのデータの比較
HSTとJWSTで得られたダークマター分布の比較。明るい部分ほどダークマターが濃く集まっていることを表す。(上)ダークマターの大きな構造同士が細いフィラメントでつながっている様子が、JWSTの画像でよりはっきりととらえられた。(下)左上の2個のダークマターの塊が、JWSTのデータではよりはっきりと見えている。右上のダークマターの塊は、HSTのデータでは広がりを持っているが、JWSTの解析でより中心に集中していることがわかった。左下のダークマターの塊は、HSTのデータでは見えていなかった。画像クリックで表示拡大(提供:NASA/STScI/A. Pagan)

ダークマターは重力を通じて、通常の物質と相互作用する。そのため、ダークマターと普通の物質の分布の「重なり具合」を調べれば、両者が相互作用している証拠を見ることができる。Scognamiglioさんたちによれば、今回のデータにみられるダークマターと通常物質の分布の関連性は偶然ではありえず、ダークマターの重力が、宇宙の歴史を通じて通常の物質を引き寄せてきたことを確認できるという。

「数千個の銀河の大集団がある場所には必ず、同じように大量のダークマターを見ることができます。また、これらの大集団同士を結びつけている通常物質のひも状の構造がある場所では、ダークマターもひも状に分布しています。これは、単に形が同じだというだけではありません。この分布図は、ダークマターと通常物質とがつねに同じ場所にあったことを示しています。両者は一緒に成長してきたのです」(英・ダラム大学 Richard Masseyさん)。

宇宙誕生の直後には、通常物質とダークマターはおそらくまばらに分布していた。その後、まずダークマターが重力で集まり始め、そうしてできたダークマターの塊が通常物質を引き寄せて、恒星や銀河が形成されるほどの密度で物質が集まる領域を作り出したと考えられている。

このようにして、ダークマターは宇宙の銀河の大規模構造を決めてきた。ダークマターが存在することで、通常物質しかない場合よりも早い時期に銀河や星の形成が始まり、第一世代の恒星たちが初期宇宙の水素とヘリウムを様々な元素へと変える働きを担って、最終的に地球のような惑星が誕生する条件が作り出された。言い換えれば、複雑な惑星が生まれるのに必要な長い時間を与えたのはダークマターなのだ。

「今回の分布図は、もしダークマターがなければ、生命が誕生するのに必要な元素は私たちの天の川銀河に存在しなかったかもしれないという強い証拠を与えています。ダークマターは、私たちの地球上や太陽系内で、日常的に遭遇するものではありませんが、私たちに大きな影響を与えてきたのです」(NASA JPL Jason Rhodesさん)。

Scognamiglioさんたちは、近い将来にNASAが打ち上げを予定している「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡」を使って、COSMOS領域の4400倍も広い領域でもダークマターの分布を調べることにしている。

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