超新星の標準理論をくつがえす新種の天体

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現在の超新星爆発の標準理論では説明不可能な超新星が発見された。類似したタイプの10倍以上のエネルギーで爆発したその超新星は、理論的予言はあったものの観測されていなかった新種の天体かもしれない。

【2017年9月29日 国立天文台

2014年8月、かじき座の方向に超新星「OGLE-2014-SN-073」(以下、OGLE14-073)が出現した。英・クイーンズ大学および伊・パドヴァ天文台のGiacomo Terreranさんと国立天文台の守屋尭さんたちの研究チームが発見直後に分光観測を行ったところ、OGLE14-073に水素から放射される光が含まれていることがわかった。

超新星「OGLE14-073」
超新星「OGLE14-073」。2014年9月24日にヨーロッパ南天天文台のNTT望遠鏡に搭載された微光天体分光撮像機「EFOSC」で撮影(提供:Terreran et al. (2017) Nature Astronomyより改変)

多くの大質量星はその生涯を終える時に水素が含まれるため、爆発すると水素を持つ超新星として観測される。こうした水素を持つ超新星は明るさが100日程度変わらないことがほとんどなのだが、OGLE14-073は発見後も徐々に増光し、発見から約100日後にようやく最大光度に達した。100日程度もかけて増光する超新星は非常に珍しく、大マゼラン雲に現れた超新星1987Aなど観測例はごくわずかしかない。

さらにOGLE14-073には、超新星1987Aの約10倍も明るいという特徴がみられた。超新星爆発の標準的な理論とされる「ニュートリノ加熱説」によれば、水素を含む超新星は、爆発が起こる際にニュートリノのエネルギーの一部が爆発エネルギーとして超新星に与えられることにより発生する。しかし、ニュートリノはほとんど物質と相互作用を起こさないため、超新星1987Aの10倍の爆発を起こすほど超新星にエネルギーを与えることは不可能と考えられているのである。

守屋さんは、OGLE14-073は大質量星の中でも特に重い星で起こるとされる「対不安定型超新星」である可能性が高いことを指摘している。このタイプの超新星は星の内部で起こる電子と陽電子の対生成に起因する不安定性で爆発が引き起こされると考えられている。もしそうであれば、OGLE14-073は対不安定型超新星の初の観測例となるという。

OGLE14-073が対不安定型超新星であれば爆発の規模の大きさや爆発噴出物の質量が大きいことを説明できるが、理論モデルとは一致しない点もある、モデルでは爆発からある程度時間が経つと水素の兆候がスペクトルから見えなくなると予言されているが、OGLE14-073では常に水素の兆候が観測されていたのだ。

対不安定型超新星の他の可能性としては、1秒間に1000回もの高速回転をする強い磁場を持った中性子星「マグネター」が形成されたという説も挙げられている。これまでは水素を持つ大質量星の爆発時にマグネターを形成することは難しいと考えられてきたが、何らかの未知の方法で形成されたのかもしれない。

超新星OGLE14-073の正体は未解明だが、その発見は、大質量星の爆発を引き起こす機構がこれまで考えられてきたよりも多様であることを示しており、星の爆発メカニズムの研究に大きな示唆を与えるものである。今後すばる望遠鏡などで行われている大規模な突発天体サーベイで似たような超新星が見つけられ、頻繁に観測を行うことで、標準理論で説明できない超新星爆発のメカニズムが確かめられると期待される。