初期宇宙に存在した、星生成を止めた大質量の円盤銀河

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重力レンズ効果を利用したハッブル宇宙望遠鏡による観測で、高速自転する大質量の円盤銀河が初期宇宙に発見された。

【2017年6月28日 HubbleSite

従来、遠方(初期宇宙)に存在する星生成を止めた銀河の構造は、近傍宇宙に存在する楕円銀河と似ていると考えられてきた。これを観測的に確かめるため、デンマーク・コペンハーゲン大学のSune Toftさんたちはハッブル宇宙望遠鏡を用いて、みずがめ座の方向にある銀河団「MACS J2129-0741」による重力レンズ効果で拡大された遠方の銀河「MACS 2129-1」を観測した。

銀河団「MACS J2129-0741」と銀河「MACS 2129-1」
銀河団「MACS J2129-0741」と重力レンズ効果を受けた銀河「MACS 2129-1」。一番下の囲みは重力レンズ効果がなかった場合の見え方(提供:Science: NASA, ESA, and S. Toft (University of Copenhagen), Acknowledgment: NASA, ESA, M. Postman (STScI), and the CLASH team)

さらに、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡の観測などと合わせて、この銀河が星生成を止めた、高速自転する大質量の円盤銀河であることが明らかになった。質量は天の川銀河の3倍もあるが大きさは半分しかなく、回転速度は天の川銀河の2倍以上速い。宇宙誕生の数十億年後という早い段階で星生成を止めた円盤銀河としては初の観測例となる。

この結果は、初期宇宙で星生成を終えた銀河の少なくとも一部は円盤銀河であり、それが現在見られるような巨大楕円銀河へと進化したことを示す初めての観測的証拠である。「星形成が止まってしまった銀河が楕円銀河だけでなく円盤銀河であり得るという事実に気づかなかったのは、単に今までの観測では、その姿を解像することができていなかっただけなのかもしれません」(Toftさん)。

MACS 2129-1で星生成が止まってしまった理由は不明だが、銀河中心の活動的なブラックホールの影響などが考えられている。

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