アルマ望遠鏡、偏波観測で世界最高感度を達成

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アルマ望遠鏡では通常の科学観測と並行して、観測性能を実証する「科学評価観測」も行われている。その評価観測で得られたデータの解析から、アルマ望遠鏡がミリ波の偏波観測において世界最高感度を有していることが確認された。

【2016年7月21日 アルマ望遠鏡

偏波とは、波の振動方向の分布が一様でなく一定方向に限られている電波のことだ。偏波の観測は宇宙空間における「磁石の力(磁場)」を調べるための重要な手段で、太陽表面の黒点やフレアと呼ばれる爆発現象、星・惑星系の誕生、超巨大ブラックホールからの高エネルギージェットなど、磁場が大きな役割を果たしている様々な現象の謎の解明に活用されることが期待されている。

アルマ望遠鏡の偏波観測性能を実証するため、りょうけん座の方向73億光年の距離にあるクエーサー「3C 286」が観測された。3C 286の中心には超大質量ブラックホールがあり、非常に高エネルギーのガス(ジェット)が放出されているが、このジェットの形成に磁場が大きな役割を果たしていると考えられている。

アルマ望遠鏡で観測したクエーサー3C 286
アルマ望遠鏡で観測したクエーサー3C 286。等高線は電波強度、紫色の短い棒は偏波の向きを表す(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Nagai et al.)

ジェットの根元付近から放射される電波の偏波強度と偏波の向きを測定したところ、過去に行われた、より長い波長であるセンチ波による観測結果よりも、アルマ望遠鏡が観測した1.3mmのミリ波の電波のほうが、偏波の割合が高いことがわかった。

ミリ波のほうがジェットの根元から放射されると考えられているため、今回の成果はジェットの根元に近づくにつれて、より強く、方向がそろった磁場があることを示すものである。クエーサー近傍の磁場構造を探る手掛かりになる結果だ。

一般に、観測される電波の総強度に対して偏波の強度は数%以下と非常に弱いため、偏波を精度よく観測するためには高い感度が必要となる。「今回の観測をもとに、アルマ望遠鏡の偏波観測の性能が非常に高いことを確認することができました。これは、アルマ望遠鏡プロジェクトにとっても重要なマイルストーンといえます」(国立天文台チリ観測所 永井洋さん)。

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