スニヤエフ・ゼルドビッチ効果を史上最高解像度で観測

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48億光年彼方の銀河団の高温ガスが引き起こす「スニヤエフ・ゼルドビッチ効果」がアルマ望遠鏡により史上最高の解像度でとらえられ、銀河団を取り巻くガスの分布や温度を詳しく観測する新たな手法が確立された。

【2017年3月22日 アルマ望遠鏡

銀河は、太陽のような星や星間ガスが集まっている天体だが、その銀河も宇宙の中で集団を形成して存在していることがある。銀河が数百個から数千個集まったものは銀河団と呼ばれており、そこには銀河の質量の合計よりも数倍も大きな質量を持つ大量の高温ガスが含まれている。

東邦大学の北山哲さんたちの研究チームは、銀河団を取り囲む高温ガスを調べるため、アルマ望遠鏡による観測を行った。高温ガスから放射されるX線はアルマ望遠鏡ではとらえられないが、高温ガスが引き起こす特殊な現象である「スニヤエフ・ゼルドビッチ効果」(*1)を電波観測することで、高温ガスの様子を調べられる。

北山さんたちが観測したのは、おとめ座の方向48億光年の距離にある銀河団RX J1347.5-1145だ。この銀河団はスニヤエフ・ゼルドビッチ効果が比較的強く、これまで様々な電波望遠鏡で観測されてきた。とくに2000年に国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡で行われた観測で高温ガスの分布にムラが発見され、従来のX線観測に基づいて想定されていた滑らかな分布とは異なることが示唆されていた。

銀河団RX J1347.5-1145
アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡で観測した銀河団RX J1347.5-1145。(青色)アルマ望遠鏡によるスニヤエフ・ゼルドビッチ効果の分布。銀河団の中心に近いほどスニヤエフ・ゼルドビッチ効果が大きく、電波が弱くなっていることがわかる(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Kitayama et al., NASA/ESA Hubble Space Telescope)

高温ガスの分布を詳しく知るためには、より高い解像度での観測が必要となる。銀河団をのっぺりと覆う高温ガスは解像度の高い電波干渉計では観測しにくい対象の一つだが、日本が開発を担当したアルマ望遠鏡のアタカマ・コンパクト・アレイ(愛称「モリタアレイ」)によって広い視野を実現し、広がる天体の分布を正確に調べられる。研究チームでは、従来の約2倍高い解像度と10倍高い実質感度で、この銀河団におけるスニヤエフ・ゼルドビッチ効果の観測に成功した。

その結果、これまでの観測を強く裏付けるガス分布が得られただけでなく、高温ガスの圧力分布がこれまでよりも高い解像度と感度で描き出され、この銀河団が激しい衝突を起こしていることが確実となった。

「スニヤエフ・ゼルドビッチ効果の存在が初めて提唱されてから50年近く経ちますが、非常に微弱な現象であるため、高解像度の観測を実現するのはまさに至難の業でした。今回、アルマ望遠鏡によってその壁がついに破られ、宇宙の進化を探るための新たな道が切り拓かれたことをたいへん嬉しく思います」(北山さん)。


1: 「スニヤエフ・ゼルドビッチ効果」:地球には、ビッグバンの名残とされる電波「宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background: CMB)」があらゆる方向からやってきている。CMBの電波が銀河団の高温ガスを通り抜けるとき、高温ガスに含まれる電子と電波が衝突し、電子の持っていたエネルギーの一部が電波に渡される。その結果、高温ガスを通り抜けた電波はもともとのCMBの電波よりも高いエネルギーに偏ることになり、これを地球から観測すると、高温ガスのある方向では他の方向に比べてCMBの電波が弱くなる現象が起こる。これを、提唱者の名前を取ってスニヤエフ・ゼルドビッチ効果と呼ぶ。

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