VLTが直接撮像した3つの原始惑星系円盤

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ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTが、3つの若い星の周囲に存在する原始惑星系円盤を直接撮像でとらえた。そのうちの1つでは数か月の間に起こった変化までもが見えている。

【2016年11月10日 ヨーロッパ南天天文台

惑星は、誕生したばかりの星を取り巻く、塵とガスからなる巨大な原始惑星系円盤で形成される。時間の経過とともに円盤内の粒子が衝突・合体し、やがて惑星サイズの天体が誕生する。しかし、惑星を生み出す円盤の詳細な進化(時間変化)についてはいまだ謎が多い。

原始惑星系円盤とそこで成長する惑星との相互作用によって、円盤には巨大な環や腕状構造、暗い隙間などができ、円盤は様々な形になる。こうした構造とそれらを生み出す惑星との関係は、現代天文学における興味深いテーマだ。

3つの研究チームが、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTに取り付けられた観測装置「SPHERE」を使って、惑星によって原始惑星系円盤が削りとられるように変化し、新たな世界が誕生する複雑な現場を直接詳細にとらえた。


「RX J1615」は、さそり座の方向600光年の距離に位置する若い星だ。オランダ・ライデン天文台のJos de Boerさんが率いる研究チームは、土星の環の巨大版と呼べるような同心円状の環が若い星を取り巻いている複雑な原始惑星系円盤を発見した。

RX J1615
RX J1615(提供:ESO, J. de Boer et al.)

原始惑星系円盤でこうした環が撮影されたのはこれまでに数例しかない。さらに興味深いのは、系全体がほんの180万歳ほどらしいことだ。これまでに見つかっている原始惑星系円盤は、誕生からもっと時間が経過している。


同じくライデン天文台のChristian Ginskiさんたちの研究チームは、カメレオン座の方向約500光年の距離に位置する若い星「HD 97048」を観測し、やはり同心円状となっている原始惑星系円盤を発見した。ほとんどの原始惑星系では非対称の渦巻く腕や渦、暗い隙間などが見られるので、対称の系が2つ発見されたことは驚くべき結果と言える。

HD 97048
HD 97048(提供:ESO, C. Ginski et al.)


オランダ・アントンパンネクック天文研究所のTomas Stolkerさんたちの研究チームは、壮観な非対称円盤を観測した。この円盤が取り巻いているのは、おおかみ座の方向約450光年の距離に位置する「HD 135344B」だ。これまでにもよく研究されてきた系だが、SPHEREによってさらに詳細に円盤の様子がとらえられた。

HD 135344B
HD 135344B。(提供:ESO, T. Stolker et al.)

円盤の外縁部には、渦を巻く腕のような構造が2つ見える。円盤をこのような姿に変えたのは巨大な原始惑星らしいと考えられている。さらに、円盤内の物質の影とみられる4つの暗い縞も観測され、そのうち1つでは数か月の間ではっきりと変化が見られた。惑星系の進化がリアルタイムで観測されるという貴重な観測例だ。

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