数十億年かけて渦巻銀河を飲み込んだ巨大楕円銀河M87

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ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)による観測で、おとめ座の巨大楕円銀河M87が中規模の渦巻銀河を飲み込んでいた痕跡が見つかった。手がかりを与えてくれたのは、M87に存在する惑星状星雲だ。

【2015年7月1日 ヨーロッパ南天天文台

約5000万光年彼方に広がるおとめ座銀河団の中心に位置するM87は巨大楕円銀河で、その質量はなんと太陽の1兆倍以上もある。M87のような大型の銀河はより小さい銀河を飲み込んで大きくなっていくと考えられているが、こうしたプロセスが実際に起こったという証拠を発見するのは容易ではない。小さい銀河の星々が大きな銀河の星々と混ざり合ってしまうからだ。

M87
M87。クリックで惑星状星雲の分布を表示(提供:A. Longobardi (Max-Planck-Institut für extraterrestrische Physik)/C. Mihos (Case Western Reserve University)/ESO)

独・マックスプランク研究所のAlessia Longobardiさんたちの研究チームは、星を観測するかわりにM87のハローに存在する惑星状星雲に注目し、その動きを調べた。惑星状星雲は太陽のような星が一生の最終段階で見せる姿で、星から放出されたガスが光っており、その光が独特の緑っぽい色で輝くので周囲の星と区別できる。

超大型望遠鏡VLTを用いた分光観測によって300個の惑星状星雲の動きを調べた結果、過去に銀河の合体が起こった痕跡が見られた。惑星状星雲だけでなくM87外部の星からの光の分布も詳しく調べたデータと合わせて考えると、合体前の銀河は中規模で星形成が進んでいた渦巻銀河であったと思われる。

「数十万光年にもわたって広がるハローに散らばった星々を確認でき、実にエキサイティングです。緑色の光を放つ惑星状星雲はまるで干し草の中の縫い針のようなもので、こうした珍しい天体が、過去星々に何が起こったのかを語ってくれています」(ヨーロッパ南天天文台のMagda Arnaboldiさん)。

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