すばるが写した「星の小川」 矮小銀河の合体現場

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【2012年2月14日 すばる望遠鏡

ドイツなどの国際研究チームが、すばる望遠鏡を用いて矮小銀河同士の合体現場を撮影することに成功した。一方の銀河に流れ込む星々のようすがはっきりととらえられており、銀河同士の合体と星生成の関係を明らかにするうえでも役立ちそうだ。


NGC 4449と飲み込まれる矮小銀河

すばる望遠鏡がとらえた「NGC 4449」(左下)と、それに飲み込まれつつあるさらに小さな銀河(右上)。「NGC 4449」中心部の青い輝きは活発な星生成活動を、外縁部や飲み込まれつつある銀河の赤い光は年老いた赤色巨星の存在を示す(提供:国立天文台、画像合成:ジェイ・ギャバニー氏)

デイビッド・マルティネス‐デルガド氏(独マックスプランク天文学研究所)を中心とする国際研究チームは、米ハワイにある日本の「すばる望遠鏡」を使った観測から、銀河に流れ込む「星の小川」の撮影に成功した。この「星の小川」、実は小さな銀河が「NGC 4449」という別の矮小銀河に飲み込まれているところで、銀河同士が合体している現場である。広い視野と高い解像度を持つすばる望遠鏡は、飲み込まれている銀河の星の1つ1つをはっきりと分離して写し出した(画像)。

りょうけん座の方向1250万光年かなたの矮小銀河NGC 4449に流れ込むこの「星の小川」は、かつて米・カリフォルニア州のパロマー天文台で撮影された写真乾板のデータ中に不思議な薄いシミとしてロシアの天文学者が発見したものだ。

マルティネス‐デルガド氏は、アマチュア天体写真家ジェイ・ギャバニー氏とともに口径50cmの望遠鏡でより高品質の画像を撮影し、NGC 4449の周囲に確かに淡い構造があることを確認した。

さらに、アーロン・ロマノフスキー氏(米・カリフォルニア大学天文台)とジェイコブ・アーノルド氏(カリフォルニア大学サンタクルーズ校)がすばる望遠鏡に搭載された主焦点カメラで観測を行い、NGC 4449に流れ込む「星の小川」の存在を明らかにした。矮小銀河NGC 4449にさらに小さな矮小銀河が飲み込まれ、合体している瞬間だ。

現代の宇宙理論では、大きな銀河は小さな銀河同士が合体することで作られるとされる。これまで、大きな銀河が絡む合体の様子は数多く観測されてきたが、矮小銀河同士の合体を直接観測することは困難だった。すばる望遠鏡で観測を行ったロマノフスキー氏は、「矮小銀河がさらに小さな銀河を飲み込む様子をとらえたこの美しい画像を、ようやく手に入れることができました。飲み込まれている銀河が引き裂かれつつある様子が見てとれます。引き裂かれた銀河の星々は、いずれ親銀河の周囲を球状に取り囲むハロー構造として残るのです」と語る。

さらにロマノフスキー氏は、「NGC 4449は高い星生成率を示すことで有名な銀河ですが、どうやら私たちはその理由をつかんだようです。落ち込んできた銀河との重力的な相互作用が親銀河の中のガスを乱し、それが原因となって星生成が始まったのかもしれません」と述べている。

NGC 4449における銀河同士の合体は、矮小銀河におけるハロー構造の生い立ちだけではなく、爆発的な星生成の起源についてもヒントを与えてくれるようだ。

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