IIb型超新星の電波観測が示唆する、前駆星の複雑なガス放出

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IIb型超新星2024issの電波観測から、超新星爆発を起こした星の近くの濃いガスを衝撃波が通り抜けて大きく加速された可能性が示された。爆発直前の前駆星のガス放出が複雑に変化 していたことを示唆する成果だ。

【2026年8月25日 国立天文台水沢VLBI観測所

超新星爆発は観測されるスペクトルに応じて様々なタイプに分類され、その違いは爆発前の天体の種類や状態などによって表れると考えられている。IIb型に分類される超新星は、主星が伴星との相互作用で水素の外層をほとんど失った状態で爆発すると考えられている。多波長観測からは、爆発前の主星(前駆星)の半径や外層構造の範囲といった性質が多様であることが示唆され、外層を失う過程や最終的な経緯にばらつきがあるとみられている。

IIb型の超新星爆発の概念図//IIb型の超新星爆発の概念図。(1)2つの恒星が互いに公転しながら接近する。(2)質量の大きい方の星(主星)がより速く進化し、膨張して赤色巨星となる。その寿命の終盤に水素の外層の大部分が伴星へ流出し、主星に不安定性が生じる。(3)主星が超新星爆発を起こす。(4)超新星の輝きが弱まると、生き残った伴星が観測できるようになり、超新星残骸は進化を続ける(提供:NASA, ESA, Ann Feild(STScI)

大質量星から放出されたガスは周囲に広がって星周物質を作り、そこに爆発で飛び出した高速の物質が衝突すると電波が放射される。これを観測することで、衝撃波の速度や星周物質の密度に関する重要な情報が得られ、主星が爆発直前にどのようにガスを放出していたのかを知ることができる。

国立天文台水沢VLBI観測所の岩田悠平さんを中心とする研究チームは、国立天文台と日本の複数の大学が連携して構築した観測網「日本VLBI観測網(Japanese VLBI Network;JVN)」の観測として、茨城大学の日立32m電波望遠鏡と山口大学の山口32m電波望遠鏡を組み合わせ、2024年5月に出現したIIb型超新星SN 2024issを爆発3日後から366日後まで計9回観測した。SN 2024issは約4600万光年彼方のかみのけ座の矮小銀河に出現した超新星で、地球に比較的近いおかげで、電波特性を追跡して前駆星の最終的な進化を理解するのに適した観測対象である。

SN 2024iss
SN 2024iss。(左)DESIレガシー撮像サーベイズ、(右)豪・サイディングスプリング天文台に設置されたラスクンブレス天文台の口径1m望遠鏡。画像クリックで表示拡大(提供:Transient Name Server; I. Pérez-Fournon, F. Poidevin, D. S. Aguado, J. A. Acosta-Pulido, A. López-Oramas, B. Nespral (IAC and ULL), and F. Acero (CEA Saclay and IAC) / Las Cumbres Observatory / Legacy Survey DR10

観測の結果、爆発10日後と23日後には電波放射が検出されたが、その後には検出されず、SN 2024issの電波放射が他のIIb型超新星と比べて、爆発後の比較的早い時期に明るくなったことがわかった。

SN 2024issの電波光度
JVNによって測定されたSN 2024issの電波光度(青丸が検出、下三角は非検出の上限値)と、これまでに詳しく観測されたIIb型超新星の電波光度の時間変化。SN 2024issは、他のIIb型超新星と同程度の最大電波光度を持つ一方、比較的早い時期に電波で明るくなったことがわかる(提供:国立天文台水沢VLBI観測所)

さらに、電波の明るさとそのピーク時間をもとにして爆発で生じた衝撃波の速度を推定したところ、主星から一定の割合でガスを放出すると仮定した場合の理論値より約2倍速度が大きいことが判明した。推定値と理論値との違いは、主星のすぐ近くに濃いガスがあり、衝撃波がその領域を抜ける際に加速されたと考えることで説明できる可能性がある。実際に別のX線観測から、主星近くに濃いガスが存在することが示唆されていた。

これらの結果から、SN 2024issの主星からのガス放出が爆発直前に一時的に活発になっていたと推測される。前駆星の爆発直前の質量損失過程が、複雑で変動的なものであったことを示唆する成果である。

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