多様な有機分子を含む「星のゆりかご」を超新星残骸で初めて発見
【2026年7月16日 新潟大学】
星や惑星は、ガスや塵のかたまりである「分子雲」の中で誕生する。分子雲の大部分は摂氏マイナス260度以下と極低温の環境だが、塵の表面を触媒とした反応を介して、複雑な有機分子が氷として生成されると考えられている。その後、星が誕生して周囲の物質が暖められはじめると、氷が昇華してガスとして放出され、生まれたての星を包む「星のゆりかご」のようになる。このような天体は「ホットコア」と呼ばれ、生命関連物質の材料となりうる様々な有機分子が検出されている。
このように、星や惑星材料物質の化学的な複雑性を探る上でホットコアは非常に重要な天体だが、これまで超新星残骸で発見された例はなかった。そのため、超新星爆発の影響下で生まれつつある星・惑星系で、その材料に含まれる様々な有機分子がどうなるのかについては、よくわかっていなかった。超新星爆発で生じる高エネルギー粒子や強い衝撃波は、複雑な有機分子を破壊する可能性もあれば、新たな分子の生成を促す可能性もある。
新潟大学の下西隆さんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を用いて、さそり座の超新星残骸「RX J1713.7-3946」を観測した。中国の歴史文献の記録によると、この天体の元になったのは、約1600年前に起こった(観測された)超新星爆発とみられている。強力な宇宙線やX線、ガンマ線放射、高速の衝撃波など、非常に過酷な環境だ。

超新星残骸「RX J1713.7-3946」領域。拡大像は各ホットコアで検出された物質の電波放射を表す。背景はX線観測(青)や赤外線観測(赤)、電波観測(白の等高線)などの結果を示す(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), T. Shimonishi et al.)
観測の結果、この領域で2個のホットコアが見つかった。超新星残骸でホットコアが発見されたのは今回が初で、いずれの天体にも多様な有機分子が付随していた。超新星の爆発時期を考慮すると、この2天体は爆発前から誕生していたと考えられている。
一方を詳しく分析したところ、複雑な有機分子の存在割合が通常の環境下にある同様の天体と類似していることがわかった。超新星爆発の現場でも赤ちゃん星は周りを包む暖かいガスに守られ、複雑な有機分子は破壊などの影響を受けていないことを示唆する結果だ。
複雑な有機分子が残っていた理由として、超新星爆発に曝されてから間もないためにまだ有機分子が壊れていない可能性や、超新星爆発の衝撃波で発生すると考えられる磁場に守られている可能性が考えられている。過去の研究では、太陽系も近傍で起こった超新星爆発の影響を強く受けた領域で誕生した可能性が示唆されている。さらに観測例を重ねることで、今回の結果が普遍的な描像かどうかが明らかになるだろう。

超新星残骸に発見されたホットコアの想像図(提供:下西隆(新潟大学)、観測結果に基づき生成AIを利用して作成)
〈参照〉
- 新潟大学:星が爆発した現場において、生まれたばかりの星を包む多様な有機分子を含んだゆりかごを世界で初めて発見-宇宙における有機分子の多様性や太陽系形成環境への新たな知見が もたらされることを期待-
- The Astrophysical Journal:Survival of Molecular Complexity under Recent Supernova Feedback: Detection of Hot Cores in RX J1713.7−3946 論文
〈関連リンク
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