「きぼう」実験で解明、宇宙で結晶が速く成長する理由

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国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟で実施された、半導体材料の結晶を成長させる実験で、地上より20%速い成長が初期に観察された。微小重力下で熱対流が抑制されたことが要因と考えられる。

【2026年6月8日 JAXA

JAXAでは、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟に搭載された、半導体材料の結晶成長などを行うための実験装置「温度勾配炉(GHF)」を用いた「Hicari-II実験」を2013年から実施している。この実験では、炉で溶かしたシリコン(Si、ケイ素)とゲルマニウム(Ge)を再結晶化させ、高品質で大口径の半導体結晶を育成している。

温度勾配炉、シリコンゲルマニウム結晶
(左上)温度勾配炉。(右上)実験試料カートリッジと、2013年の第1回実験で育成されたシリコンゲルマニウム結晶。(下)公開訓練で実験ラックに搭載されたGHFから試料カートリッジを取り出す古川聡宇宙飛行士(2010年9月撮影)。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA(左上、右上段2図)(右3段目)(下)

このHicari-II実験において、地上では観察されなかった高速成長現象(地上に比べて20%の高速化)が、SiGe結晶の成長開始後から5時間程度までの間に現れた。組成的過冷却という現象が、熱対流が抑制される微小重力環境で顕在化し、これによって高速成長現象が発生したものとみられる。一方で、結晶成長開始から数十時間が経過後の成長速度は地上実験とほぼ一致していた。

SiGe結晶成長速度の成長時間依存性
SiGe結晶成長速度の成長時間依存性。点線は地上で同実験条件下での界面安定成長速度。宇宙では0.15mm/h(△印)でも界面は不安定化せず、地上に比べて約20%の高速化が観察された(提供:JAXAリリース、以下同)

混晶SiGe半導体は次世代の高機能半導体結晶として着目されているが、均一組成化が難しく、成長速度が遅いことが実用に向けた弱点となっている。今回の実験結果は、次世代半導体材料の効率的な設計・製造の指針に重要な視点を与えるものと期待される。

今回の研究成果の概念図
今回の研究成果の概念図。地上実験と宇宙実験におけるSiGe結晶成長実験の模式図(融液と結晶含む)