しし座流星群のクラスター現象をとらえた

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夜空に突発出現した「流星クラスター現象」を、西日本7地点でネットワークカメラが同時観測。

【2026年12月3日 星ナビ編集部

解説:今村和義さん(阿南市科学センター

2025年11月21日5時40分ごろ、西日本の広い範囲で「流星クラスター現象」と呼ばれる珍しい天文現象が一斉に観測されました。流星クラスターとは、わずか数秒間に複数の流星がほぼ同時に連続出現する現象で、世界的にも観測例は多くありません。2025年8月にはペルセウス座流星群に伴う流星クラスター現象が観測(星ナビ11月号にて紹介)されましたが、その生成メカニズムには未解明の点も多く、複数地点での同時観測は貴重な研究資料となります。

今回の現象は、少なくとも西日本の7地点に設置されたネットワークカメラ「ATOM Cam2」(以下、アトムカム)によって記録され、SNS上でも大きな注目を集めました(※件数は2025年12月2日時点。7件はSNS等から確認されたもので、他にも同機種によるデータが存在する可能性があります)。

SNSで最初に報告したのは大阪府のようのすけ氏(@younosuke38)でした。この投稿を見た筆者が、徳島県阿南市の自宅に設置したアトムカムの映像を確認したところ、同時刻に同様の現象を記録していたことが判明。すぐにX(@siriusb_wd)で発信し、日本公開天文台協会(JAPOS)のメーリングリストにも共有したところ、和歌山県のみさと天文台(@tubuyakumisaten)でも同じ現象が撮影されていたことがわかりました。

流星クラスター@大阪府
アトムカムで観測された流星クラスター現象の一例。観測者:ようのすけ氏(大阪府大阪市)

流星クラスター@和歌山県紀美野町みさと天文台(2025年11月21日)

さらに、流星・火球情報を共有するSonotaCoネットワークの掲示板にも複数の報告が寄せられ、同日夕刻には埼玉県の流星観測家・関口孝志氏が暫定解析を実施。今回の流星クラスターは「しし座流星群」に由来する可能性が高いことが報告されました。

SNS上の投稿を散逸させておくのは惜しいと考え、筆者がXとFacebookで追加調査を行った結果、岡山県吉備中央町岡山市、香川県三豊市、和歌山県御坊市でもアトムカムによる観測例を確認。それぞれ観測者の許諾を得てデータをとりまとめ、関口氏ら国内の研究グループに提供しました。以上より、少なくとも大阪、和歌山(2か所)、岡山(2か所)、香川、徳島の7地点で独立した同時観測が確認されています。

流星クラスター@岡山県
アトムカムで観測された流星クラスター現象の一例。観測者:キヨシɥs0ʎıʞ氏(岡山県吉備中央町)

アトムカムは一般家庭でも入手できる安価なネットワークカメラで、その手軽さから2020年代より流星や火球の観測に用いる人が急速に増えました。高価な機材や専門的な技術を用いずに、国内で広域の同時観測が実現したのは、気軽に参入できる市民科学として象徴的な観測例のひとつになったのではないかと思います。

なお、より詳しい報告を月刊「星ナビ」2026年2月号に掲載予定です。

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