ベテルギウスが減光中

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オリオン座の1等星ベテルギウスが急激に光度を下げてきています。果たしてまた2020年の時のような大減光が起こるのか、注目を集めています。

【2024年3月4日 高橋進さん】

オリオン座のベテルギウスは直径が太陽の800倍ほどもあるといわれる赤色超巨星で、また半規則型の脈動変光星でもあります。ときとして予想外の変光を見せる事もあり、2020年2月には1.6等星にまで暗くなって、オリオン座の1等星がリゲルだけになってしまったと騒がれたこともありました。また、2023年11月には光度曲線が突然に平坦になってしまい、これも話題になりました。

こうしたベテルギウスの光度変化は、恒星の脈動による変化と、恒星から予想外に放出される(または温度変化などによって発生する)ダストによる変化とが組み合わさって起こっていると理解されています。2020年の場合は、恒星から大量のダストが放出されたと共に、恒星の脈動によって減光が起こり、恒星表面の温度が下がったために光を吸収する分子の発生が加速されたことなどがあいまって大減光となったのではないかと推測されています。また、2023年11月の光度変化が見られなくなった現象は、本来なら明るくなるべきタイミングでダストが放出されるなどして増光が打ち消されてしまったのではないかと想像されています。

このように予測困難な光度変化を見せるベテルギウスですが、2024年になって急速に光度を落とし、1月初めから2月末までの2か月間の間に0.4等から0.7等まで暗くなってしまいました。1か月に0.15等の変化というのは、ベテルギウスとしてはかなり顕著な光度変化です。おうし座の1等星アルデバランが0.9等ですので、この調子でいくとベテルギウスの明るさがアルデバラン並みになってしまう可能性もあります。1年前の4月には0.2等でリゲルと同じ明るさで輝いていましたから、最近のベテルギウスの光度変化がいかに顕著なものか強く感じられます。

最近のベテルギウスの光度
2023年11月以降のベテルギウスの光度。画像クリックで表示拡大(VSOLJのデータから高橋さん作成)

一方で、今回の減光について必ずしも予想外の現象とは言えないとの意見もあります。ベテルギウスの光度変化はいくつかの周期が重なり合ったものと考えられていて、2020年の大減光の前はおよそ400日の周期で光度変化を繰り返していました。そして大減光以降はおよそ210日の周期での光度変化を起こしています。

この光度変化が現在も続いているとすると、3月1日ごろが極小ではないかとみられています。この推察が正しければ、今後は光度変化が反転し、急速に明るさを取り戻していくのかもしれません。果たして今後どのような光度変化を見せてくれるのか、ここしばらくはベテルギウスから目が離せません。

ベテルギウス周辺の星の明るさ
ベテルギウス周辺の星の明るさ。数字は恒星の等級(01=0.1等)を表す(「ステラナビゲータ」で星図作成、比較星等級はヒッパルコス星表による)

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