秋の食変光星、アルゴルとカシオペヤ座RZを観測しよう

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秋は食変光星の季節。ペルセウス座のアルゴルやカシオペヤ座RZなど観測しやすい食変光星がいくつもあります。この機会に食変光星の世界をお楽しみください。

【2025年10月20日 高橋進さん】

連星系が互いの星を隠すことで明るさが変わって見える変光星を食変光星と呼びます。その代表星と言えばペルセウス座のβ星、アルゴル(β Per)です。

星座絵では、アルゴルはペルセウスが持つメドゥーサの顔にあたる位置にあります。昔から明るさを変える不気味な星と見られていたようですが、変光を最初にきちんと確認したのは17世紀のイタリアの天文学者のモンタナリです。ただし、およそ3日おきに1等級以上も暗くなる原因についてはわかっていませんでした。

減光の謎を解明したのはイギリスのグッドリックでした。グッドリックは小さなころから耳も口も不自由でしたが、鋭い観察眼の持ち主でアルゴルの変光を注意深く観測しました。そして、規則的な減光は、明るい星の周りを暗い星が回り、明るい星を隠すことで起こるのではないかと発表したのでした。最初は連星系の存在自体が疑問視されていましたが、グッドリックの発表から100年あまりたった1889年にアルゴルのスペクトルが周期的に変化することが観測され、グッドリックの説が正しいことが明らかになりました。

アルゴルの模式図 アルゴルの光度曲線
(1枚目)アルゴルの模式図(作図:高橋さん)、(2枚目)アルゴルの光度曲線(上:1周期分のグラフ/下:清田誠一郎さんによる極小時の観測結果)。それぞれ画像クリックで表示拡大

アルゴルの平常光度はおよそ2等ですが、主極小になると3.4等くらいまで減光します。減光スピードは1時間に0.4等くらいで、減光が始まってから極小になるまでには5時間くらいかかります。そして極小から平常光度に変わるのにまた5時間くらいかかります。さすがに10時間も観測するのは大変なので、極小の前後を2時間ずつくらい観測すると、きれいな光度曲線が描けます。5分おきくらいに観測するのがおすすめです。

そして理屈通りにいけば2日と20時間49分おきに極小が来るはずなのですが、観測で求められた主極小の時刻を見ていくと、実は多少のずれがあることがわかっています。連星系の外側をもう1つの星が回っているという説や、暗いほうの星から明るい星へガスが流れ込んでいる影響という説がありますが、詳細はわかっていません。こうした謎の解明のためにも、多くの皆さんによる観測が求められています。

アルゴル周辺の星図
アルゴル周辺の星図。数字は恒星の等級(38=3.8等)を表す。画像クリックで表示拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)


アルゴルは光度変化が1時間で0.4等のわりとゆっくりとした変化でしたが、もう少し変光速度が速く観測しやすい星がカシオペヤ座RZ(RZ Cas)です。こちらは平常光度が6.2等、極小光度が7.7等と、観測には双眼鏡が必要ですが、1時間に0.8等くらい明るさが変わりますので、アルゴルよりも光度変化がわかりやすく観測しやすい食変光星です。極小時刻の前後を1時間ずつ観測するくらいでもきれいな光度曲線が描けますから、初心者にもお勧めの食変光星と言えます。

カシオペヤ座RZの模式図 カシオペヤ座RZの光度曲線
(1枚目)カシオペヤ座RZの模式図(作図:高橋さん)、(2枚目)カシオペヤ座RZの光度曲線(金井清高さんによる観測結果)。それぞれ画像クリックで表示拡大

食変光星は一夜の観測で光度曲線を描くことができ、極小時刻を求めることでその星の変化を数値的に明らかにできて、天文学的にも意義の高い観測活動が行えます。秋はこのほかにも観測しやすい食変光星がいくつもあります。この機会にぜひ、食変光星の世界をお楽しみください。

カシオペヤ座RZ周辺の星図
カシオペヤ座RZ周辺の星図。画像クリックで表示拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)

アルゴルとカシオペヤ座RZの極小予報
アルゴルとカシオペヤ座RZの2025年10~12月の極小日時予報(作成:高橋さん)

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