暗い極大に終わった変光星はくちょう座χ

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夏を代表するミラ型変光星のはくちょう座χが8月中旬に明るさの極大を迎えました。今シーズンは5等台前半と、暗めの極大だったようです。

【2025年10月7日 高橋進さん】

はくちょう座χ(カイ、χ Cyg)は周期およそ408日で4等級から14等級までダイナミックに明るさが変化するミラ型変光星です。ただ、極大等級(最も明るくなった時の明るさ)はその時々で変化し、明るいと3等に達することもありますが、暗いと6等以下のこともあります。

今年のはくちょう座χは3月におよそ13等の極小を経過し、その後はゆっくりと明るさを増してきていました。通常、はくちょう座χは8等から9等くらいまで明るくなったときに一時的に増光の停滞が見られることが多いのですが。今回はまだ10等くらいの段階(6月ごろ)に少し増光速度が鈍りました。しかしすぐに増光モードになり、7月からは1日に0.1等と、かなり急激な速度で明るくなっていきました。

はくちょう座χの光度
はくちょう座χの光度(2024~2025年)(VSOLJのデータから高橋さん作成)

ただ、8月になるとその急な増光にストップがかかり、8月13日ごろにおよそ5.3等で暗めの極大を迎えたようです。過去、はくちょう座χは2018年12月と2020年2月に5等台の暗い極大がありましが、今回はそれらよりさらに暗いものでした。筆者調べでは、2014年7月の6.7等というたいへん暗い極大の時以来と思われます。

はくちょう座χの光度
はくちょう座χの光度(2012~2025年)。画像クリックで表示拡大(VSOLJのデータから高橋さん作成)

はくちょう座χは極大を過ぎてからは2日に0.1等くらいのゆっくりとした速度で光度を落としています。今回は暗い極大でしたが、まだしばらくは双眼鏡でじゅうぶん見える明るさです。ぜひ引き続きの観測をお願いします。

はくちょう座χ周辺の星図
はくちょう座χ周辺の星図(「ステラナビゲータ」で星図作成)

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