天の川銀河中心のブラックホールの縁に渦巻く磁場構造を発見

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天の川銀河中心の超大質量ブラックホール「いて座A*」の縁に渦巻く強い磁場構造が見つかった。M87銀河の中心ブラックホールにも同様の構造が存在しており、全てのブラックホールに強い磁場が共通して見られる可能性を示唆する成果だ。

【2024年4月3日 EHT-Japan

国際プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は、2017年におとめ座の巨大楕円銀河M87の中心ブラックホール(M87*)を観測し、史上初めてブラックホールの影(ブラックホールシャドウ)とそれを取り巻くリング状の光の像をとらえた

このときに記録された偏光の解析から、リング状の像に沿って偏光の向きが渦を描くように分布していることが2021年に明らかになり、ブラックホールのすぐそばに強く整列した磁場が存在することが示された。磁場が存在する場所で発生した光や磁場を通過した光には、振動面の向きが揃った電磁波である「偏光」が見られることが多く、偏光の向きを観測することによって磁場の情報が得られるのだ。

さらにEHTは2022年に、天の川銀河の中心の超大質量ブラックホール「いて座A(^*)(エースター)」のブラックホールシャドウもとらえることに成功した。この結果から、いて座A*とM87*は、1000倍以上も質量とサイズの差があるにもかかわらず、見た目が驚くほどよく似ていることがわかった。

そこで、2つのブラックホールに外見以外の共通点があるのではないかと考えたEHTチームは、いて座A*の偏光を調べた。「ブラックホール近傍の高温ガスからの偏光を画像化することで、ブラックホールに落ち込む、あるいは排出されるガスを取り巻く磁場の構造と強さを直接調べることができます。偏光は、ガスの特性やブラックホールに物質が供給された際に起こる現象など、天体物理学の重要な問題について、より多くのことを教えてくれます」(米・ハーバード大学 Angelo Ricarteさん)。

その結果、いて座A*の偏光画像から、M87*に見られるものと非常によく似た渦巻き状の磁場構造が発見された。「天の川銀河の中心にあるブラックホールの近くにも、渦巻くように整列した強力な磁場があるということです。いて座A*の偏光構造が、より大きく、強力なジェットを伴うM87*に見られるものと驚くほどよく似ていることに加え、秩序だった強い磁場がブラックホールが周囲のガスや物質とどのように相互作用するかに重要であることがわかりました」(米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センター Sara Issaounさん)。

M87*といて座A*の偏光画像
超大質量ブラックホールM87*(左)といて座A*(右)の偏光画像の比較。渦巻き状の構造が共通して見られ、両ブラックホールの縁が類似した磁場構造を持つことが示された(提供:EHT Collaboration)

過去の研究から、M87*は周囲の磁場によって強力なジェットを放出できていることが明らかになっている。今回の研究成果は、いて座A*についても同じことが言える可能性を示唆するものだ。「質量や大きさ、周囲の環境の違いにもかかわらず、ブラックホールにガスが供給され、またその一部がジェットとして放出される物理過程が大質量ブラックホール間で普遍的である可能性を示唆する、重要な発見です」(伊・ナポリ・フェデリコ2世大学 Mariafelicia De Laurentisさん)。

この4月には再びEHTによるいて座A*の観測が予定されている。EHTでは観測のたびに新しい望遠鏡、より広い帯域幅、新しい観測周波数を取り入れるなどのアップデートを行っていることから、今回さらに向上した画像が得られると期待される。また、今後10年間の計画拡張により、いて座A*の動画作成が可能になれば、隠れたジェットが明らかになったり、他のブラックホールでも同様の偏光特性が観測されるようになったりするかもしれない。

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