1400万年前の複数の超新星爆発で形成、太陽系を包む1000光年の泡

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太陽系を囲むように広がる直径1000光年の巨大な泡構造は、1400万年前に相次いだ超新星爆発をきっかけに膨らんだことが示された。

【2022年1月19日 ハーバード・スミソニアン天体物理学センター

太陽系周辺の宇宙空間には比較的希薄で高温のガスが分布しており、その外側には低温で密度の高い領域が壁のように広がっている。このような太陽系周辺の構造は「ローカルバブル(局所泡)」と呼ばれ、存在は何十年も前から知られていたが、正確な形状や成因はよくわかっていなかった。

ローカルバブルの想像図
ローカルバブルの想像図。中央に太陽系があり、周縁部に星形成領域が分布している(提供:Leah Hustak (STScI))

米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)のCatherine Zuckerさんたちの研究チームは、太陽から200パーセク(約650光年)以内の距離にある高密度ガスや若い星の位置と動きを分析することで、ローカルバブルの誕生から現在に至るまでの歴史を初めて解き明かした。分析にはヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」の観測データなどを利用している。

ローカルバブルは直径1000光年程度で、泡の中には太陽100万個分程度の質量が含まれており、現在も秒速6.7kmほどで広がっている。これだけの規模の泡が膨らみ始めたきっかけとなったのは、約1400万年前に相次いだ超新星爆発だという。研究チームはその数を15個前後と見積もっている。超新星の爆風は周囲の星間ガスを外へ押し出すとともに圧縮し、これによってローカルバブルの表面では次々と星が生まれた。今でも表面には7つの有名な星形成領域が存在する。

「データと理論の両方に基づいた、驚くべき推理小説です。超新星モデル、星の動き、ローカルバブルを囲む物質の新しい分布図など、様々な手がかりを利用することで、私たちの周りにおける星形成の歴史を解き明かすことができるのです」(CfA Alyssa Goodmanさん)。

ローカルバブルはあたかも太陽系を中心に広がっているかのように見えるが、これはたまたまなのだという。「ローカルバブルを作り出した最初の超新星が爆発したとき、私たちの太陽は現場から遠く離れていました。しかし、太陽は約500万年前に泡へ入りこむ経路をたどり、今では全くの偶然で、泡のほぼ中心に位置しています」(オーストリア・ウィーン大学 Joao Alvesさん)。

偶然とはいえ、私たちが1つの泡の中にいるということは、泡そのものは珍しいものではないはずだ。研究チームは、天の川銀河のいたるところにローカルバブルのような低密度領域があり、スイスチーズのようになっているのではないかと考えている。

今回の研究成果の解説アニメーション動画「A Bubbly Origin for Stars Around the Sun」(提供:STScI)

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