「第二の地球」候補、TRAPPIST-1惑星系の公転軌道面は傾いていない

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すばる望遠鏡による観測から、太陽系外惑星系「TRAPPIST-1」の惑星の公転軌道面が、太陽系の惑星と同様に主星の自転軸に対してほぼ垂直であることがわかった。地球に似た環境の惑星で、このような関係が示されたのは初めてのことだ。

【2020年5月21日 すばる望遠鏡

みずがめ座の方向約40光年彼方に位置する恒星「TRAPPIST-1」の周りには、惑星が主星の手前を横切ることで主星が暗くなる減光現象をとらえる「トランジット法」によって、7つの地球型惑星が発見されている。そのうち3つの惑星(TRAPPIST-1 e, f, g)は、惑星表面に水が液体の状態で存在可能な領域「ハビタブルゾーン」に位置しており、とくに注目されてきた。しかし、これまで各惑星の質量や大気についていくらか手がかりは得られたものの、生命存在の可能性に関わる条件の一つである軌道の傾きについては何もわかっていなかった。

東京工業大学の平野照幸さんたちの研究グループは、すばる望遠鏡に搭載された太陽系外惑星探査のための観測装置「IRD」を用いてTRAPPIST-1系を2018年8月31日に観測し、TRAPPIST-1のスペクトルを精密に測定した。このときはちょうど、ハビタブルゾーンに位置する2つを含む3つの惑星がTRAPPIST-1の前を一夜のうちに横切る機会だった。

平野さんたちが「ロシター効果」と呼ばれる現象で引き起こされるスペクトルの変化を解析したところ、主星であるTRAPPIST-1の自転軸とその周りの惑星の公転軸がほぼそろっていることが突き止められた。これまでにロシター効果によって木星型惑星や海王星型惑星の公転の傾きを検出した例はあったが、ハビタブルゾーンに位置する地球型系外惑星の軌道の傾きについて情報が得られたのは、今回が初めてだ。

ロシター効果の説明図
ロシター効果の説明図。自転している恒星を横から見ると、私たちに近づいる側と遠ざかっている側はそれぞれドップラー効果で波長が変化する(近づく側がわずかに青く、遠ざかる側が赤くなる)。その手前を惑星が通過すると、隠した部分の波長成分が弱まることで、あたかも恒星全体が近づいたり遠ざかったりしているかのようにスペクトルが変化する。ロシター効果の解析から恒星の自転軸とトランジットする惑星の公転軸とがなす角度を制限することができる(提供:『日本物理学会誌』より転載)

恒星の自転軸に対する惑星の軌道の傾きは、惑星の形成やその後の進化に関する情報を与えてくれるものとなるが、これまでの研究では軌道面が大きく傾いていたり公転が完全に逆行しているものも知られていた。このような傾きの原因としては、惑星同士の重力の相互作用で軌道が大きく変化する散乱効果などが考えられる。

一方、TRAPPIST-1系で主星の自転軸と惑星の公転軸がよくそろっているということは、複数の惑星が同じ面内で作られ、その後は軌道を大きくかき乱されることなく現在に至ったことを意味する。TRAPPIST-1のような低温・低質量のM型矮星の周りにおける惑星系の起源を議論する上で不可欠な情報だ。

M型矮星は天の川銀河の恒星の大部分を占めていることから、その周りの惑星系や生命存在の可能性について大きく注目されている。今後さらに探査や研究が進められることが期待される。

TRAPPIST-1の惑星系の想像図
TRAPPIST-1の惑星系の想像図。7つの地球型惑星のうち4つが描かれている(提供:国立天文台)