宇宙の渦構造によって成長する赤ちゃん星
【2019年11月22日 アルマ望遠鏡】
オリオン座の方向約1300光年の距離に位置する、12光年の長さに伸びた超音速のジェット「HH 111」の中心には、生まれて約50万年(太陽の1万分の1の年齢)の原始星(赤ちゃん星)が存在している。星の質量は太陽の約1.5倍で、その重力に引かれて落下してくるガスの一部が、磁場の力などによって星の近くから吹き上げられジェットを形成している。
従来、この原始星の周りには半径160au(太陽~海王星の5倍強)に広がる降着円盤が検出されていた。降着円盤とは、天体の重力で集められたガスや塵が天体の回りに形成する円盤構造のことだ。
台湾中央研究院天文及天文物理研究所のChin-Fei Leeさんたちの研究チームが今回、従来の8倍の解像度(16au離れたものを見分けられる)を持つアルマ望遠鏡を用いて原始星の降着円盤を観測したところ、円盤内に2つの渦巻き腕があることがわかった。渦を巻く腕は、円盤に集積した塵粒子が出す熱放射によって輝いていた。
やや成長した若い星の周りの原始惑星系円盤で検出される渦は、円盤の中に作られた見えない原始惑星との相互作用によって形成されるものだ。一方、今回見つかった2つの渦巻き腕はそれとは異なり、周囲の分子雲から円盤へガスや塵が降着することによって引き起こされるものである。
高い解像度を誇るアルマ望遠鏡のおかげで、原始星を取り巻く降着円盤で渦の検出が可能となったことにより、降着円盤を通したガスの移動メカニズムの研究が進展することが見込まれる。このような観測は原始星のみならず、活動銀河の中心にある超大質量ブラックホールなどの天体を取り巻く降着円盤についての洞察を深めることにもつながる。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:宇宙の渦構造によって成長する赤ちゃん星
- Nature Astronomy:Spiral Structures in an Embedded Protostellar Disk Driven by Envelope Accretion 論文
〈関連リンク〉
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