生まれたての星をくるむ、3枚重ねのパンケーキ状構造

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生まれて間もない原始星系の円盤をアルマ望遠鏡で観測した結果、3層からなるパンケーキのような構造や、円盤から中心星へ物質を供給する役割を果たす渦巻構造の腕らしきものが見つかった。

【2023年7月10日 アルマ望遠鏡

星の材料となるガスが収縮して原始星が誕生するとき、周りに集まった物質は円盤を形成する。この円盤は、原始星に物質を供給して成長を促進するとともに、やがて原始惑星系円盤へ進化し、惑星形成の現場となると考えられる。

ペルセウス座の方向約1000光年の距離に位置する原始星系「HH(ハービッグ・ハロー)211」は、誕生してから3万5000年ほどしか経っていないと推定される。台湾中央研究院天文及天文物理研究所の李景輝さんたちの研究チームは、解像度・感度ともに非常に高いアルマ望遠鏡を用いて、その円盤に含まれる塵が放出する電波を観測した。

HH 211系の円盤
HH 211系の円盤。原始星の位置は赤で示されている。(a)アルマの撮影データから得られた円盤のマップ。右上は同スケールの天王星軌道。(b)ハイパスフィルターを適用して3本の線状構造を強調。(c)観測結果を再現した、3層構造の円盤モデル。青いほど温度が低く、赤いほど高い。(d)真上から見た円盤モデル。渦状構造が見える(提供:Lee et al.)

HH 211の円盤は、地球から見てちょうど真横を向いている。円盤の半径は太陽~天王星間の距離(約30億km)ほどしかなく、とても小さい。一方で円盤の厚みはかなりのもので、まだ十分な塵が赤道面に沈殿していないことがわかる。惑星の形成が始まるには、塵が円盤面に集まって厚みは薄く、密度は高くなることが不可欠だ。

興味深いのは、横から見た円盤に3本の明るい線状構造が見えることだ。円盤は3層に重ねられたパンケーキのような構造となっているとみられる。とくに真ん中の層は円盤の回転軸に対して非対称な形をしていることから、渦巻構造が形成されていることが示唆される。渦巻構造の腕は、より進化した原始星の円盤でも観測例があり、円盤の物質が中心星へ落下する過程に関わっていると考えられる。

「まだ進化の最初の段階にあるHH 211の円盤をとらえ、円盤を構成する塵の広がりを詳しく調べることができてたいへんワクワクします。今回の観測の結果から、生まれて間もない原始星周辺の円盤の姿を明らかにできました。今回とらえられた円盤の赤道面部分の渦巻構造の腕は、円盤物質が中心の星に落ち込み、中心星が進化して行くプロセスにおいてとても重要な意味を持つものと考えます。渦巻構造の腕が形成され、円盤物質が内側の中心星へ持ち込まれることが今まで他の研究から予測されていたからです。観測された渦は塊状になっているように見受けられますので、ここから惑星の形成が始まる可能性もあります」(李さん)。