特異な偏光が示す、小惑星ファエトンの非一様な反射特性

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毎年12月に見られる「ふたご座流星群」の母天体とされる小惑星「ファエトン」の偏光観測から、その表面が通常の小惑星と大きく異なることが確認され、表面の反射特性が非一様であることが明らかになった。

【2018年9月12日 国立天文台

小惑星「ファエトン((3200) Phaethon、フェートンとも)は太陽に接近する軌道を巡っている小惑星の一つで、毎年12月中旬ごろに見られるふたご座流星群の原因となる流星体の放出源と考えられている。しかし、どのようにしてファエトンから流星体が放出されたのかなど、わかっていない謎も多い。

ファエトンのレーダー画像
2017年12月に取得されたファエトンのレーダー画像。時系列は左上から右下で自転1周期分に対応する(提供:Arecibo Observatory/NASA/NSF)

地上からファエトンの観測条件が良くなる機会が少ないことから、これまであまり研究が進んでいなかったが、2017年12月はファエトンが地球に接近し、明るく観測できる貴重なチャンスだった(次に好条件となるのは2093年)。そこで京都産業大学・神山天文台の新中善晴さんをはじめとする国際研究グループは、国立天文台三鷹キャンパスの口径50cm公開望遠鏡に偏光撮像装置「PICO」を搭載し、ファエトンの偏光撮像観測を集中的に行った。

国立天文台50cm公開望遠鏡に搭載された偏光撮像装置「PICO」
国立天文台50cm公開望遠鏡に搭載された偏光撮像装置「PICO」(提供:国立天文台/古荘玲子)

太陽の光を小惑星が反射すると、反射光の振動方向に偏りが生じる。これを偏光(とくに直線偏光)と呼び、偏光度を調べることで、小惑星の表面がどのような状態なのか(細かい砂に覆われているのか、もっと粒の大きな小石のようなものに覆われているのか等)を明らかにする手がかりが得られる。

表面の様子を知るためには、太陽-ファエトン-地球が成す角(位相角)を広い範囲にわたって観測することが重要なため、新中さんたちは2017年の観測機会を最大限に活かし、これまでにない広い位相角範囲での観測を行って偏光度を精度良く測定した。

その結果、ファエトンの表面が他の普通の小惑星とは大きく異なり、非常に高い偏光度を示すことが明らかになった。2016年にも限られたデータによる高い偏光度が報告されていたが、今回の観測により、その結果がはっきりと確認されたことになる(参照:「活動的小惑星ファエトンの素顔」)。

ファエトンの偏光度
ファエトンの偏光度(提供:国立天文台リリースページより)

今回の結果から、ファエトンの表面は、比較的大きな塵の粒子で覆われているか、あるいは他の小惑星に比べて特異な反射特性を持っている可能性が示唆される。また、これまでに観測されていない小さい位相角での偏光度も得られており、他の研究グループの観測結果と合わせると、ファエトンの表面に反射特性のムラがあることも示された。

2017年12月には世界中で多くのファエトン観測が実施された。それらのデータを合わせることで、さらに詳細な研究が可能になるだろう。また、ファエトンは宇宙航空研究開発機構等が2022年に打ち上げを予定している深宇宙探査技術実証機「デスティニー・プラス」(DESTINY+)の探査候補天体でもあり、今回の研究結果はデスティニー・プラスの立案に役立つ重要な基礎資料となる。この計画でファエトンを近傍から観測することによって、地上観測で推定された自転軸の方向などが検証されることが期待される。