「宇宙の恐竜の卵」、アルマが原始巨大星団を発見

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宇宙で最も古い天体の一つである球状星団は、数多く見られるが生まれたばかりものは非常にまれで、形成プロセスもわかっていない。アルマ望遠鏡の観測により、今まさに誕生しようとしている球状星団かもしれない天体が発見された。

【2015年5月18日 アルマ望遠鏡

からす座の方向約7000万光年かなたの触角銀河(アンテナ銀河)は2つの銀河が衝突している天体で、多数のガス雲の中で激しい星形成が進んでいる。アルマ望遠鏡の観測から、太陽の5000万倍もの質量を持ち高密度なガス雲であるにも関わらず、内部に星が見当たらない「爆竹分子雲」が見つかった。今まさに誕生しようとしている球状星団の、初の観測例かもしれないという。

(上)ハッブル宇宙望遠鏡による触角銀河(中央右)アルマ望遠鏡による分子雲(下)非常に高密度で大質量であるにもかかわらず星が存在しないガス雲
(上)ハッブル宇宙望遠鏡による触角銀河(中央右)アルマ望遠鏡による分子雲(下)非常に高密度で大質量であるにもかかわらず星が存在しないガス雲(提供:B. Saxton (NRAO/AUI/NSF); NASA/ESA Hubble, B. Whitmore (STScI); K. Johnson, U.Va.; ALMA (NRAO/ESO/NAOJ))

「私たちはおそらく、宇宙における星形成の最も古くて極端な事例のひとつを目撃しているのです。球状星団の持つすべての特性を備えているにもかかわらず、まだ星形成が開始されていない天体を発見するというのは、孵化寸前の恐竜の卵を見つけるようなものなのです」(バージニア大学Kelsey Johnsonさん)。

これまでに観測された球状星団ではすべて、既に形成されていた星によって周辺の環境が大きく変化しており、星団の初期を知る手がかりは失われてしまっていた。今回の観測によって、星が環境を変えてしまう前の原始的な高密度巨大ガス雲がようやく見つかり、多くの球状星団が形成される条件について、これまでにない知見が得られた。

ほとんどの球状星団は100億年以上前に誕生したとみられているが、その進化は急速で、星を持たない初期段階は100万年程度の間しかない。アルマが発見した爆竹分子雲は、その一生の中の非常に特別な時期にあり、初期宇宙の主要な構成要素を研究できるユニークな機会を与えている。たとえば、爆竹分子雲は典型的な星間空間より約1万倍も大きい極端な圧力下にあり、球状星団を形成するためには高い圧力が必要とされるという従来の理論を支持するデータが得られている。