木星の巨大サイクロンを俯瞰する迫力の3D動画
【2018年4月16日 NASA JPL】
NASAの探査機「ジュノー」には、木星の大気やオーロラ領域を赤外線で観測する機器「JIRAM」が搭載されている。JIRAMは木星大気の深い層から放射される赤外線を昼夜を問わずとらえることができる。
ジュノー・ミッションの研究者チームは、2017年2月に実施されたジュノーの4回目となる木星へのフライバイ(接近飛行)の際にJIRAMで観測したデータをもとに、木星の北極に存在するサイクロン群の赤外線3D動画を作成した。北極に大きなサイクロンが存在し、その周りを直径4000km~4600kmほどもある8つのサイクロンが取り囲んでいる様子が描き出されている。
JIRAMで得られた画像から作成された木星北極の赤外線3D動画。明るい部分は木星大気の奥深くにある暖かい領域、暗い部分は高層大気中の低温領域を示す(提供:NASA/JPL-Caltech/SwRI/ASI/INAF/JIRAM)
「ジュノー以前は、木星の両極がどんな様相を呈しているのかについては想像するしかありませんでした。今回、ジュノーが両極へのフライバイを行ったことで、極域の気象パターンや巨大なサイクロンをこれまでになく高い分解能でとらえた赤外線画像が数多く得られました」(伊・宇宙空間天体物理学惑星学研究所 Alberto Adrianiさん)。
ジュノー・ミッションの副主任研究員Jack Connerneyさんたちの研究チームは、ジュノーが木星を8周する間に得られた磁場の計測データから、木星の新たな磁場モデルを構築した。彼らはこのモデルに基づいて、木星の表面と内部での磁場分布図を作成した。木星の内部領域は木星のダイナモ機構の起源と考えられている。
この磁場分布のデータから、木星の北半球の磁場は予想外に複雑で不均一なものであることが明らかになった。北半球の中緯度地方には非常に強いN極の磁場を持つ領域が存在し、その周りには弱いS極の磁場を持つ領域が隣接している。
これに対し、南半球の磁場は一貫してS極で、緯度が高くなるほど磁場も強くなる。おおよそ流体でできていると考えられる木星で、なぜ南北の半球にこのような磁場の違いが見られるのかは謎であり、現在も研究が進められている最中だ。
ジュノーが観測した木星磁場の動画。赤の領域は磁力線が出ていくN極、青の領域は磁力線が入るS極を示す(提供:NASA Goddard Space Flight Center)
「ジュノーは予定のマッピング観測の3分の1しか終えていませんが、私たちはすでに、木星のダイナモがどのように働くかについてのヒントを発見しつつあります。残りの軌道周回で得られるデータを心待ちにしています」(Connerneyさん)。
ジュノーは、2016年7月4日に木星周回軌道に入ってからすでに2億kmほどを飛行し、これまでに11回の木星フライバイを終えている。12回目となる次回の木星フライバイは、5月24日に予定されている。
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