最大級の超大質量ブラックホールは銀河より速く成長

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X線天文衛星「チャンドラ」などの観測データを使った2つの研究から、最大級の質量を持つ銀河中心ブラックホールの成長速度は母銀河の星形成率よりもずっと速いことが示された。

【2018年2月21日 Chandra X-ray Observatory

ほとんどの銀河の中心には、太陽の数百万倍から数十億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールが存在すると考えられている。こうしたブラックホールの成長とその母銀河の星形成は互いに連動していることが多くの観測から示唆されており、その成長速度の比はすべての銀河でだいたい普遍的だと考えられてきた。

米・ペンシルベニア州立大学のGuang Yangさんたちの研究チームは、NASAのX線天文衛星「チャンドラ」が観測した「チャンドラ・南北ディープフィールド」と呼ばれる領域などに含まれる、43億光年から122億光年彼方に位置する銀河の中心に潜むブラックホールの成長率を調べた。

「チャンドラ・南ディープフィールド」の画像と、銀河中心のブラックホールの想像図
X線と可視光線のデータを合わせた「チャンドラ・南ディープフィールド」の画像と、銀河中心に潜む超大質量ブラックホールの想像図(提供:NASA/CXC)

Yangさんたちが調べた超大質量ブラックホールの成長率と母銀河内の星形成率の比を計算したところ、太陽1000億個分の星が存在する銀河における比は、太陽100億個分の星が存在する銀河の比の約10倍も大きいことが示された。つまり、質量が大きい銀河では小さいものに比べて、銀河に対する超大質量ブラックホールの成長がずっと速いということになる。

「おそらく、質量が大きい銀河の方が、冷たいガスをより効率的にブラックホールに送り込めるのでしょう」(ペンシルベニア州立大学 Niel Brandtさん)。

「チャンドラ・南ディープフィールド」に存在するブラックホールの成長に関する紹介動画(提供:NASA's Goddard Space Flight Center)

また、スペイン・宇宙科学研究所のMar Mezcuaさんたちの研究チームは、複数の銀河団の中心に位置する72個の銀河を、チャンドラによるX線データと、オーストラリアコンパクト電波干渉計、米・カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群などの観測から得られた電波データを使って調べた。

超大質量ブラックホールの質量とブラックホールに付随する電波やX線の強度との間にあるよく知られた関係を利用して、Mezcuaさんたちが銀河団中心の銀河内の超大質量ブラックホールの質量を計算したところ、ブラックホールと銀河が連動して成長するという仮定に基づいた質量よりも約10倍も大きいことが明らかになった。最大級の質量を持つブラックホールの成長速度が母銀河の星形成率を上回っているという証拠を、Yangさんたちとは独立の研究で示す成果である。

Mezcuaさんたちは、観測対象となったブラックホールのうち約半数が、太陽の100億倍以上の質量を持つと計算している。「ブラックホールは究極の天体ですから、そのうち最も極端な『超』超大質量ブラックホールとも呼べるようなものが母銀河と連動した成長に関する法則を破っていたとしても、驚くようなことではないのかもしれません」(カナダ・モントリオール大学 J. Hlavacek-Larrondoさん)。

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