初期宇宙にも存在したクエーサー直前段階の天体「ブルドッグ」

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すばる望遠鏡の観測から、クエーサーの直前段階で塵を吹き飛ばしている天体「ブルドッグ」が見つかった。さらにJWSTの観測で初期宇宙に見つかった極めて赤い天体もブルドッグらしいことがわかった。

【2023年12月22日 すばる望遠鏡

ほぼ全ての銀河の中心には、太陽の数百万倍から~10億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールが存在する。このようなブラックホールが周囲の物質を飲み込み、激しくエネルギーを放射して明るく輝く天体はクエーサーと呼ばれる。その明るさはクエーサーが存在する銀河全体と同等以上にもなるほどで、非常に遠方にあっても観測することが可能だ。

クエーサー誕生の理論的なシナリオとして、「ガスを多く持つ銀河同士の合体が引き金となる」というものがある。銀河同士が合体して爆発的な星形成が始まり、合体銀河の中心に塵に覆われたクエーサーが形成される。このクエーサーから噴出する外向きのガス流「アウトフロー」によって塵が吹き飛ばされ、クエーサーが明るく見えるようになる、という説だ。ただし、クエーサーが塵に覆われている間は可視光線では極めて暗いため、クエーサーの前段階にあたる天体の発見は非常に困難だった。

クエーサーの進化に関する理論的な予想シナリオ
クエーサーの進化に関する理論的な予想シナリオ(提供:信州大学 登口暁さんら)

この問題を克服するために「可視光線で暗く中間赤外線で明るい天体」を捜索するという手法が考案され、クエーサーの前段階である塵に覆われた銀河「ドッグ」(DOG; Dust-obscured galaxy)を効率的に探すことができるようになってきた(参照:「太陽の10兆倍以上の赤外線、塵に覆われた銀河「DOG」を多数発見」)。しかし依然として、アウトフローによって塵が吹き飛ばされているというクエーサーの直前段階にある天体は見つかっていなかった。

信州大学の登口暁さんたちの研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」を用いた広域探査(HSC-SSP)による可視光線データと、NASAの赤外線天文衛星「WISE」の中間赤外線データを用いて、100億~110億光年彼方の宇宙にドッグを571個発見した。谷口さんたちはここから、「クエーサーは可視光線で青いので、その直前段階では青く光り始めているかもしれない」という点に着目し、青い光の超過をもつドッグを探した。その結果、青く光っている天体が8個見つかった。研究チームはこれらの天体を、青い光が超過していることから「ブルドッグ」(BluDOG; Blue-excess DOG)と名付けている。

ブルドッグ
HSCで撮影された「ブルドッグ」(提供:NAOJ / HSC Collaboration)

すばる望遠鏡の微光天体分光撮像装置「FOCAS」などを用いた観測から、ブルドッグがクエーサーによく似たスペクトルを持つことや外向きにガスが流れ出していると考えられることがわかり、これらがガスや塵を吹き飛ばしながらクエーサーへと進化している段階に相当する天体らしいことが確かめられている。

研究チームはさらに、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測で見つかっている、120億~130億光年彼方の宇宙に存在する極めて赤い天体「ERO」(Extremely Red Objects)にも注目した。EROは超大質量ブラックホールの特徴を示していて、クエーサーの誕生と深い関係があると考えられている新種族の天体で、ブルドッグとスペクトルがよく似ている。

EROとブルドッグを詳しく比較したところ、EROもクエーサー直前のアウトフロー段階にある天体らしいことが示された。つまり、EROは初期宇宙におけるブルドッグだと考えられる。両者には相違点もあり、今後の観測研究で相違の理由を含めたクエーサーの形成過程の全容解明が期待される。

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