超新星爆発から遅れて生成される塵
【2018年1月25日 カーネギー研究所】
宇宙空間のあちこちに存在している塵は、遠くにある星の光を遮るなど天体観測の際には邪魔なこともあるが、太陽系や銀河、さらに宇宙の歴史を知るための鍵となる重要な存在でもある。
最近の観測で、遠くにある若い銀河の中に大量の塵が見つかっている。こうした塵は太陽の10倍以上の質量を持つ大質量星が一生の最期に起こすII型超新星爆発で生成されたものとみられているが、いつどのようにして塵が生成されたのかは明らかになっていない。
米・カーネギー研究所のNan Liuさんたちの研究チームでは、46億年以上前の超新星爆発で生成された後に隕石に閉じ込められ地球に降ってきたと考えられる、炭素が豊富な炭化ケイ素の微小な塵を調べた。
塵にはチタン49という物質が含まれているが、これはII型超新星爆発で生成される放射性同位体のバナジウム49が放射性崩壊して作られるものだ。塵の中にチタン49がどのくらい存在しているかは、塵が超新星爆発後のどのタイミングで作られたかに関係してくる。
分析の結果、塵はII型超新星爆発から2年以上経過してから生成されたはずであることが示された。太陽系が誕生する以前の超新星爆発によって生成された塵は様々な面で同位体的に炭化ケイ素と類似していることから、塵の生成が遅れるのは炭素が豊富な超新星全般に当てはまると考えられ、これは理論計算とも一致する説である。
「塵がどこから来たのかを知ることで、宇宙の歴史と様々な天体がどのように進化しているかについても知ることができるのです」(Liuさん)。
(左上)超新星残骸の代表的な例として知られるかに星雲、(右下)超新星爆発で生成したとされる炭化ケイ素の塵の電子顕微鏡写真(提供:NASA/Larry Nittler)
〈参照〉
- カーネギー研究所:Meteoritic stardust unlocks timing of supernova dust formation
- Science Advances:Late formation of silicon carbide in type II supernovae 論文
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