太陽系誕生時の有機物を含む隕石の非破壊分析に成功

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大阪大学などの研究グループが、地球外有機物を含む炭素質コンドライト隕石を非破壊定量分析することに成功した。「はやぶさ2」が持ち帰る小惑星物質などの分析に、非常に有効な手法となる。

【2017年11月16日 日本原子力研究開発機構大阪大学

JAXAの探査機「はやぶさ2」は現在、目標天体の小惑星「リュウグウ」を目指し飛行中だ。来年夏ごろに到着してサンプル採取などの探査を行い、2020年に地球帰還予定となっている。また、NASAの探査機「オシリス・レックス(OSIRIS-REx)」も小惑星「ベンヌ」に向かって飛行中で、こちらもサンプル採取などを行った後2023年ごろに地球に戻ってくる予定である。

これらの計画で探査される小惑星「リュウグウ」や「ベンヌ」はC型というタイプで、太陽系や生命材料物質の進化の証拠が残されていると考えられている天体だ。両ミッションの目標は小惑星そのものの理解だけでなく、分子雲のような低温環境で作られた単純な有機物が、小惑星内部の熱や水が関わるプロセスによってどのように組成や構造を変え複雑化したかを理解することにもある。

その解析研究のためには、地球の有機物などの物質で汚染されることなく、非破壊で回収サンプルの化学組成や酸化還元状態、同位体などを明らかにすること、回収試料の最適部位を特定して世界最先端分析機関に配分することが極めて重要な課題となる。

大阪大学の寺田健太郎さんたちの研究チームは、大阪大学核物理研究センターに設置された実験装置「MuSIC」を用いて、隕石の特性X線分析を行った。MuSICは負ミューオン(μ-粒子)という不安定な素粒子を物質に当てて発生する特性X線を使い、物質を分析する装置である。発生した特性X線は高いエネルギーをもち、1cm程度の岩石試料を透過することができるので、試料を破壊することなく内部の化学組成を分析することができるという特長を持つ。

大阪大学「MuSIC」のビームライン
「MuSIC」のビームライン(提供:日本原子力研究開発機構のリリースより、以下同)

寺田さんたちが分析した「ジビルウィンズワン(Jbilet Winselwan)隕石」は、最近発見された炭素質コンドライト隕石だ。ウクライナに落下したミゲイ隕石に代表される炭素質コンドライト隕石のグループ(CMグループ)との類似が指摘されてきたが、これまで全岩の化学組成はよくわかっていなかった。

ジビルウィンズワン隕石とコンドライト隕石グループの元素比の比較
ジビルウィンズワン隕石とコンドライト隕石グループの元素比の比較

今回の研究では、ジビルウィンズワン隕石に含まれるマグネシウム、ケイ素、鉄、酸素、硫黄、炭素といった元素の非破壊定量分析に世界で初めて成功した。この隕石は太陽系誕生時の記憶を残しており、生命材料ともなりえた地球外有機物を含んでいるということだ。また、隕石全体の主要元素の存在度パターンは炭素を含めてCMグループとよく一致しており、ジビルウィンズワン隕石がCMグループ炭素質コンドライトとして分類できることが地球化学的に初めて明らかになった。

今回開発された「ミューオン特性X線分析」では試料にダメージを与えることなく、非破壊で炭素や酸素を定量的に分析することができるという大きなメリットがある。さらに窒素の定量分析もできる可能性もあり、太陽系初期に作られた有機物の主成分を非破壊分析できる大きなポテンシャルを秘めた唯一の分析手法といえる。リュウグウのサンプルの分析などに対して非常に有用であり、改良や活用が大いに期待される。

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