超大質量ブラックホールのそばに明るい天体が出現

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有名な電波銀河「はくちょう座A」の中心にある超大質量ブラックホールの近くに、非常に明るい電波源が現れた。2つ目の超大質量ブラックホールが存在し光り始めたもののようだ。

【2017年5月26日 NRAO

地球から約8億光年の距離にある有名な電波銀河「はくちょう座A(Cygnus A)」は、1939年に発見されて以来、頻繁に観測・研究されてきた銀河だ。

英・リバプール・ジョン・ムーア大学のDaniel Perleyさんたちは2015年から2016年にかけて、米・国立電波天文台のVLA(超大型干渉電波望遠鏡群)をはくちょう座Aに向けた。VLAによる観測は1996年以来のことだ。そして、銀河中心核の近くに現れた明るい電波源をとらえた。

「じゅうぶん明るいので、過去の画像中に写っていればすぐにわかります。1996年以前のものには見られませんから、この20年間に明るい天体が発生したことを示しています」(国立電波天文台 Rick Perleyさん)。

はくちょう座A
はくちょう座Aの中心部の、1989年と2015年の比較。VLAによる電波観測データ(オレンジ)とハッブル宇宙望遠鏡の画像を重ねている(提供:Perley, et al., NRAO/AUI/NSF, NASA)

この天体の正体は超新星爆発か、銀河中心核付近に存在する2つ目の超大質量ブラックホールが起こしたアウトバーストのいずれかだろうと考えられている。しかし、既知の超新星爆発と比べてあまりに長期間にわたって明るさを保っていることから、超新星の可能性はなさそうだ。

一方、天体ははくちょう座Aの中心にある超大質量ブラックホールからは1500光年ほど離れているものの、周囲にある物質を急速にむさぼる超大質量ブラックホールと多くの特徴が一致している。「私たちはこの銀河に2つ目のブラックホールを発見したのだと考えています。つまり、天文学的な時間スケールでつい最近、銀河同士の合体があったことが示唆されます。将来はブラックホール同士も合体するでしょう」(国立電波天文台 Chris Carilliさん)。

2つ目の超大質量ブラックホールがアウトバーストを起こし電波で見えるようになった原因は、ブラックホールが新たな「食糧源」と遭遇したためではないかと考えられている。その食料となったのは、銀河同士の合体によって混ぜられたガスか、2つ目のブラックホールに接近した星がブラックホールの強力な重力によってバラバラに引き裂かれたものだろう。

「更なる観測によって、この天体に関する疑問を解く鍵が得られるでしょう。もしこれが2つ目のブラックホールであれば、似たような銀河にも、同様の発見があるかもしれません」(Daniel Perleyさん)。

ちなみにRick Perleyさんは1980年代にVLAではくちょう座Aの観測を行った天文学者で、Danielさんはその息子さんだということだ。

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