中質量星の伴星を撮像、主星から離れた惑星の探査にも応用

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すばる望遠鏡を用いた中質量星の観測から、その周囲を回る伴星が直接撮像で見つかった。観測結果を惑星形成理論から予測される惑星などの伴天体の数や分布と比べることで、理論の検証と理解につながる。

【2016年9月8日 すばる望遠鏡

太陽系以外の惑星系は現在2500個以上も見つかっているが、主星のすぐそばを巨大な惑星が公転しているなど、知られている系外惑星系の大半は太陽系とは大きく異なる姿をしている。

こうした惑星系や惑星そのものの形成モデルとしては太陽系を手本とした様々なものが提唱されている。モデルの妥当性を確かめるためには、理論から予測される「恒星からどれくらい離れた位置に、どれくらいの重さの惑星が、どれくらいの数あるか」という惑星頻度を観測と比較するという方法がある。とくに、遠方の軌道をめぐる惑星(遠方惑星)の存在は、モデルを見分ける上で決定的な役割を果たす。

遠方惑星は公転周期が数十年と長いため、系外惑星の検出によく用いられる視線速度法(ドップラー法、主星の視線方向の速度変化を調べて惑星の存在を検出する方法)だけで遠方惑星を調べることは難しい。そこで、長周期の視線速度変動を見せる天体に対しては「直接撮像観測」を行うことが重要になる。

総合研究大学院大学の笠嗣瑠さんたちの研究チームは、米・ハワイのすばる望遠鏡の赤外線カメラHiCIAO(ハイチャオ)を用いて、太陽の数倍程度の質量を持つ中質量星の直接撮像観測を行った。HiCIAOは主星の明るい光を隠して観測できるので、周囲にある暗い天体を見つけるのに適した装置だ。

観測から、うみへび座γ星など3つの星の周りに、主星から40天文単位(太陽から地球の約40倍)ほど離れた伴星が見つかった。直接撮像の結果と視線速度のデータを組み合わせて解析したところ、視線速度の変化はこれらの伴星によるものであることが確かめられた。

見つかった伴星
3つの中質量星に見つかった伴星(黄色い丸の中)。白い大きな円や四角は、主星の光をさえぎっている部分(提供:国立天文台)

一方で、別の3つの星では太陽の100分の1よりも重い伴星は見つからなかった。これらの星の視線速度変化を引き起こしているのは惑星という可能性があるが、データ解析により、3つのうち2つでは遠方天体が存在するとしても恒星だということがわかった。残る1つについては遠方惑星が存在する可能性があるという。

今後、長周期の視線速度変動を示す多数の天体に対して直接撮像観測を行い、伴天体の存在を確認することにより、遠方惑星がどんな割合で存在しているかが明らかになってくるだろう。理論モデルの検証や惑星系の多様性の理解が進むことが期待される。

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