恒星間天体アトラス彗星から極端に多い鉄やニッケルを検出

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恒星間天体のアトラス彗星から、極端に多い鉄やニッケルが検出された。水に対する相対比は太陽系彗星の数十倍以上と推定され、彗星研究者にとって予想外の特異性が明らかになった。

【2026年8月27日 京都産業大学

昨年7月に発見されたアトラス彗星(3I/ATLAS)は、人類が目にした3例目の恒星間天体だ。長い年月をかけて宇宙空間を旅してきた恒星間天体には生まれ故郷の情報が含まれていると考えられ、太陽系から去っていくまでの短い期間に多くの観測をすることによって、他の恒星周囲における惑星形成の理解につながるデータが得られると期待される。

アトラス彗星
2025年11月22日撮影のアトラス彗星(3I)(撮影:広住元さん)。アストロアーツ 天体写真ギャラリーより

京都産業大学 神山宇宙科学研究所でもこれまでに、神山天文台の荒木望遠鏡や国立天文台のすばる望遠鏡を使った観測研究を進めてきた。その成果として、アトラス彗星は太陽系の彗星と比べてアンモニアが欠乏している可能性や、二酸化炭素の割合が多めであることなどを明らかにしている。

伊・パドバ大学およびイタリア国立天体物理学研究所のAlessandra C. Muraさん、京都産業大学の河北秀世さんたちを中心とする研究チームは、伊・アジアーゴ天文台で実施されたアトラス彗星の分光観測のデータを詳しく分析し、鉄やニッケルなどの存在量を調べた。

太陽系の彗星では、鉄やニッケルといった金属の多くが塵(ダスト)に含まれていると考えられており、観測的にも裏付けられている。鉄とニッケルの成分比は太陽の元素組成比とほぼ一致していて、太陽系のもととなった物質の成分比を反映していると考えられてきた。しかし、太陽の熱で塵が溶けないような、太陽から離れた彗星の観測で鉄とニッケルの成分比が太陽と一致しないという研究例もあり、由来やメカニズムの議論が続いている。

Muraさんたちによる分析の結果、アトラス彗星から、太陽系の彗星で見られる量を大きく上回る大量の鉄やニッケルが検出された。水に対する相対比では、一般的な太陽系の彗星の数十倍以上と推定される。

アトラス彗星の紫外線・可視光線波長域のスペクトル
アトラス彗星の紫外線・可視光線波長域のスペクトル。緑の部分(波長388nm付近)はCN分子の輝線で、一般的な彗星でも強く観測される。●印は鉄やニッケルの出す輝線のパターンを理論的に再現したもので、観測とよく一致する。一般的な太陽系彗星では鉄やニッケルの輝線はもっと微弱で、このように強くはない(提供:京都産業大学プレスリリース、以下同)

鉄やニッケルの原子ガスは、2例目の恒星間天体であるボリソフ彗星(2I/Borisov)でも検出されていたが、太陽系の彗星との大きな違いはなく、アトラス彗星の特異性が際立つ。原因についてはよくわかっていないものの、太陽系の彗星とは極端に異なる環境で生まれたことは間違いないだろう。どのような化学反応によってアトラス彗星の氷が形成されたのか、世界中の研究者の注目が集まっている。

アトラス彗星における鉄・ニッケルとCNの生成率の比較
アトラス彗星における鉄・ニッケルとCN(シアンラジカル)の生成率の比較。アトラス彗星(青)ではCNに対する鉄・ニッケルの相対量が太陽系彗星(赤)より著しく高く、組成比として100倍近くに達する可能性がある

「まだサンプルが少ない恒星間天体の一つが太陽系と全く異なる環境で生まれたことを示唆する、驚くべき発見です。今後も見つかると予想される恒星間天体の多様性がわかってくれば、それらの成分の差から生まれ故郷の環境の差を明らかにしていく研究にも発展していくかもしれません。その意味でとても楽しみです」(神山宇宙科学研究所 渡部潤一さん)。