Ia型超新星爆発を引き起こす原始ブラックホールの兆候を解明

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原始ブラックホールが引き金となって爆発したIa型超新星が、いくつかの超新星残骸や近傍のIa型超新星の特性を説明できることや、天の川銀河の恒星の化学組成の傾向を説明できることが理論研究で示された。

【2026年7月29日 カブリIPMU

「原始ブラックホール(PBH;Primordial Black Holes)」は、約138億年前のビッグバン直後に宇宙が急激に膨張した(インフレーション)際に生じた物質の初期ゆらぎから生成されたと考えられている天体だ。PBHは正体がはっきりしていないダークマターの候補とも考えられ、質量が小惑星程度の小さいPBHが宇宙に大量に存在すれば、ダークマターを説明することができるとされる。ただし、こうした小さいPBHを観測するのはきわめて難しい。

先行研究によれば、PBHが宇宙空間を走り恒星の中を通り抜けることがあり、その重力で生じた潮汐相互作用によって白色矮星がIa型超新星として爆発を起こす可能性が示唆されていた。そこで、この過程でどんなIa型超新星が誕生するかを調べて観測データと比較すれば、現象が起こる頻度やPBHの数などについて推測することができる。

原始ブラックホールが引き金となったIa型超新星
原始ブラックホール(PBH)が白色矮星を通過してIa型超新星爆発を起こす様子の模式図。PBHの重力で生じる潮汐相互作用によって白色矮星内部の縁辺部の物質が加熱され、ある閾値(約5億ケルビン)を超えると制御不能な燃焼が引き起こされる。これによって生じる局所的な熱核連鎖反応が引き金となってIa型超新星爆発となる(提供:カブリIPMUリリース(Generated using Gemini Al (Banana Pro)))

米・SUNYポリテクニック・インスティテュートのShing-Chi Leungさんと、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(カブリIPMU)の野本憲一さんたちの研究チームは、PBHが引き金になる星の爆発という新たなシナリオに基づいて、超新星の力学的・光学的・化学的特性の研究を進めている。Leungさんたちは昨年、PBHが引き金となった白色矮星の爆発によって、標準的なIa型超新星モデルに非常によく似たIa型超新星が引き起こされるという研究成果を発表していた。

今回Leungさんたちはさらに研究を進め、PBH起源のIa型超新星のモデルと、超新星残骸(ティコ、ケプラー、3C 397など)や近傍のIa型超新星(SN 2011fe、SN 2012cgなど)、および天の川銀河の恒星の化学組成との比較検討を行った。その結果、PBHによって引き起こされるIa型超新星が、これらの天体で観測されたいくつかの特性をよく説明できることが示された。

ティコの超新星残骸、ケプラーの超新星残骸、SN 2011fe
(左)ティコの超新星(SN 1572)の残骸、(中)ケプラーの超新星(SN 1604)の残骸、(右)2011年におおぐま座の銀河M101に出現した超新星SN 2011fe(提供:(左)X-ray: NASA/CXC/RIKEN & GSFC/T. Sato et al; Optical: DSS、(中)NASA/CXC/Univ of Texas at Arlington/M. Millard et al.、(右)フルーツ&スカイさん

また、ニッケル56やニッケル57などの放射性同位体、マンガンやニッケルなどの安定元素を調べることで、これらの超新星や超新星残骸の起源となった恒星の質量と金属量(宇宙の歴史の中でいつその恒星が誕生したのかを示す指標)を特定した。この情報をもとに、天の川銀河の恒星に見られる化学組成の傾向を説明するには、PBHを起源とするIa型超新星が一定の割合で存在する必要があることも明らかになった。

「私たちの研究は、超新星の一部がPBHがきっかけで引き起こされた可能性を示唆しています。PBHという捉えどころのない天体を直接観測することはできないとしても、その性質を探るための興味深い手がかりは自然界に数多く残されているようです」(Leungさん)。