天の川銀河の中心に「ミニ超新星」の残骸

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天の川銀河の中心方向にある超新星残骸いて座Aイーストが、小規模な爆発として分類が提唱されているIax型超新星で作られた可能性が示された。

【2021年2月15日 チャンドラ

超新星には大きく分けて、質量の大きな恒星が最期に起こす爆発であるII型超新星などのタイプと、比較的質量が小さい恒星が核融合を終えてから残した白色矮星が何らかの要因で起こす爆発であるIa型超新星という分類が知られている。後者は真の明るさがほぼ一定とされることから、遠方の銀河までの距離を知る標準光源として重視されてきた。

だが近年、Ia型超新星の中には生成する元素の割合が異なり爆発の規模も小さいものがあることがわかってきた。そしてこれらをIax型という新しいタイプの超新星に分類することが提唱されている。そのIax型超新星の痕跡が、天の川銀河にも存在する可能性が出てきた。天の川銀河のほぼ中心に位置し、これまで大質量星の超新星残骸とされてきた「いて座Aイースト(Sagittarius A East)」が、Iax型超新星によることを示す証拠が得られたのだ。

「いて座Aイースト」と「いて座A*」
「いて座Aイースト」(楕円内)と「いて座A*」(十字の印)。X線観測を青、電波観測を赤で表した擬似カラー画像(提供:X-ray: NASA/CXC/Nanjing Univ./P. Zhou et al. Radio: NSF/NRAO/VLA)

いて座Aイーストは、天の川銀河の中心に位置する超大質量ブラックホール「いて座A*」のすぐ近くに位置する。そこで、中国・南京大学のPing Zhouさんたちの研究チームは、NASAのX線天文衛星チャンドラがいて座A*周辺を観測したデータを合計約35日分集め、いて座Aイーストが発するX線から元素のパターンを探った。

Ia型超新星の爆発は白色矮星にガスが降り積もるなどして質量が増え、核融合反応が始まることで発生する。この反応は新たな元素を合成しながら極めて短時間で進行し、白色矮星自体を粉々にする。これに対してIax型超新星では、何らかの理由で核融合反応が伝わる速度が遅く、爆発の規模も小さいため、おそらく白色矮星の一部は残る。そして、生成される元素の量も通常のIa型超新星とは異なる。Zhouさんたちは、いて座Aイーストの元素パターンがゆっくりとした爆発と一致することを示し、元となった超新星がIax型である可能性を指摘したのだ。

他の銀河で起こるIax型超新星は比較的暗いため発見数は少ないが、Ia型の約1/3から1/5の割合で起こっているのではないかと推測されている。天の川銀河には、爆発から2000年以内のIa型超新星残骸が3つ、その候補が2つある。もし、いて座Aイーストが過去2000年以内に起こったIax型超新星なのであれば、Ia型に対する割合は他の銀河の観測結果から推測されるものと合う。

これまで、いて座Aイーストは大質量星の崩壊に伴う超新星で作られたと考えられていたが、Ia型超新星であった可能性も否定できないとされていた。今回の研究は両方の解釈を否定し、Iax型という新たな分類に含めることを主張するものだ。

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